東北地方太平洋沖地震:イタリア人記者が女川『原発ジプシー』に聞く

日本在住のイタリア人ジャーナリスト、Pio d’Emilia(ピオ・デミリア)氏が被災地へと赴き、女川原子力発電所で働く『原発ジプシー』にインタビュー。

日本『原発ジプシー』

恐いかって?、いや〜それはないですよ。ただ、心配はしてますけどね…。来週から日本全国でタバコが販売されなくなるって…わかってます?タバコがなくなったら、もう終わりですよ!」
女川の(今回はヒーローにならなかった)作業員らが笑う。
一体、どうしてなのか見当もつかないが、世界で最も地震の危険にさらされた海岸に建てられた原子力発電所の作業員らだ。
いつか、日本人が説明してくれる日が来ることだろう。なぜ、日本のもっと安全な海岸域ではなく、この辺りに原発を密集させようと思ったのか。最悪の選択である。しかも、唯一の選択でもなかったのだ。
彼らに会ったのは偶然だった。白砂が美しい海岸で有名なこの町の(今では津波に一掃されてしまったが)、数少ない営業中の居酒屋で出会ったのだ。町と人口の半分は消え去ってしまった。自分の家を2kmも離れた所で見つけた人もいると言う。あの大惨事から2週間、誰かを…それか、何かを探し出すために瓦礫の中をさまよい続けている人々もいる。

『ジプシー』…原子力発電所で働く『季節』労働者たちには、すぐに互いを見分けられると言う。
陽気で、押しが強く、ひっきりなしに煙草を吸い、特に、この辺りの方言…東北弁を(私達には理解不能。西日本出身の日本人も分からないと言う)話さないからだ。
彼らは仕事について、危険や放射線について話したがらない。彼らにとって身近なものではないのだ。彼らは彼らで、至急、何とかしなければならない問題を抱えている。給料袋の中身は常に何かが足りない。銀行は営業を停止しているか、遅延しているか。家族に送金するにも振込は困難になっている。そして今度は煙草の販売中止だ。今では世界でも数少ない専売特殊会社のひとつ『日本たばこ』から発表されたばかりなのだ。フィルターの供給会社は東北に集中しており、現在、製造ができない状態なのである。
大阪では地震被災者を支援すべく史上初のチャリティー試合が、あの長友選手も含め、試合実現に奔走したザッケローニ監督と共に決行された。では今度は、我々も声を上げようではないか。今後、どうなってしまうのか?再び緊急事態となると言うのか?
「いや〜、ここじゃ全部、落着いてるって言うでしょ。津波が起きた2日後…3月13日は非常事態になったんですよ。放射能が1時間に21マイクロシーベルト放出していてね…。でも、10分もしたら、もういつも通りになっていてね。放射線の放出量が急上昇してるのは、ここの原発のせいじゃなく福島のせいだって。」

『みんな言ってる』。ここ最近の魔法の言葉だ。ありとあらゆることが口にされ、電話で交わされている。地元や海外のメディアが誇張し、曲解し、省略し、時には捏造したこと。福島だけでなく、北西に200km離れた女川でも…おとしめられ、いく分忘れ去られたこの町でも、唯一の公式な情報源と言えば、東京電力…近年、ミスや規約違反、手抜きを繰り返してきたあの企業なのだ。
1986年から91年にかけて、東電は安全規約に対し16回もの重大な違反を犯してきたのであり、それにより度々、警告を受け、罰金を支払ってきた。しかし、1999年の東海村での事故はその勘定には入っていない。この事故は数週間にわたって隠蔽され、詐欺的な手法でもって情報操作された。
『原発ジプシー』の哀しみ、真の悲劇が伝えられたのは、この時が初めてだった。
この件に関心を持ち続けている日本人ジャーナリストのヒグチケンジさんが、次のように話している。
「この方面の労働者7万人ほどのうち、6万3千人が派遣雇用者や季節労働者、それかメンテナンス作業や緊急事態のために月単位で雇われている労働者なんです。もともとは東京の山谷や大阪の釜ヶ崎などのドヤ街でかき集められた労働者たちで、専門的知識など特にありません。まぁ、何年もそうやって働いて、放射能汚染と言う高い代償を払いながら、ある意味で専門的にはなってゆくんですが。
全従業員の約90%に当り、最終的には、放射能にまみれるために賃金が支払われてる労働者なんです。」

リュウ(仮名)さんは、そのうちの一人だ。2ヶ月前から女川原発で働いている。そこでは、単純であるほどに『危険』な作業を任されているのだ。どんな『危険』かと言えば、作業服を洗うとか、埃を吸い込むとか、水漏れの後始末とか…。リュウさんは以前から、福島をはじめ各地の原発で働いてきており、隅々まで熟知している。
友達や仕事仲間とは連絡を取り合っているのですか?
「ええ。最初の数日は電話で話しましたけど、その後はないですね。何が起きてるのか分からないけど、話すわけにもいかないしね。」
『原発ジプシー』の生活って、どんなものなんですか?収入は良いの?どんな危険が待ち受けてるのか分かってますか?
「給料はその時その時によるかな。日給は最高で1万円(注:90ユーロ)までいきますね。放射線の量によるんだけど…まぁ、俺ら慣れてるから!(笑)」
リュウさんによれば、『フクシマ50』についてどうこう言っても意味はないと。
実際のところ『強制された作業員』がどっさりいて、もちろんその中には、あの『命令され』、文字通り政府から『どう喝された』消防職員も含まれるのだ(数日前、躊躇する職員に対し、海江田万里経済産業相が「臆病者」と激しく叱責し、解雇すると脅したが、その後、管首相から公の場で批判され、TVの生放送で謝罪している。)。
300名、いや、それ以上か。50名と言うのは、事故が起きた原発施設内に交代で入り、穴を塞いでいる作業員の数だ。つまり、既に明らかなことだろうが、原子炉内部は正真正銘の損害を受けており、それを冷却していると言うこと。

ストレスだらけの重労働。使い捨て要員向けの『汚れ』仕事。
1980年代の終わり頃、東京電力では『黒人ジプシー』の手まであてにしていたことがある。ゼネラル・エレクトリック社から斡旋されたアメリカの有色人種作業員らで、当時、同じく『原発ジプシー』として働いていた日本人ホリエクニオさんが告発し、日本の核世界についての血も凍るようなドキュメンタリーを発表している(ホリエさん自身も被ばく者)。
ホリエさんの献身的な活動は一見すると『ボランティア』のようだ。しかし実際は、失望、そして必要に駆り立てられた…その日暮らしを強いられ、すべてを犠牲にしての活動だ。
政府がきちんと自覚せねばならない状況にあって、(3月13日)危険が悪化してきたために、急遽、一日に被ばくして良い放射線量が100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに上げられた。イギリスやフランスの原発作業員の12倍の数値にあたる。
先日、作業員20名ほどが緊急入院し、そのうち3名は深刻な容態にあるため、正式に上限数値を上げねばならなかったのだ。
女川原発のジプシーらに別れを告げながら、私はミツオさん(仮名)のことを思い出していた。退避エリアの境にある福島県川俣町の避難センターで、昨日、会った原発派遣作業員だ。おそらく今日、福島原発内の作業に戻っていることだろう。彼は怯え、それと同じぐらい諦めていた。
原発から60kmほどに位置している日産いわき工場の作業員らも、似たりよったりのことだろう。それとは異なり、ホンダやトヨタでは工場の操業再開を月曜日に延期している(もちろん従業員らは休日扱い)。日産ではすべてが焼失。昨日から、すべてが通常通りの就業をしている。
やはり、我々は皆、もはや『ジプシー』なのだ。仕事のそれなのだ。

(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:Il Manifesto 2011年03月28日






東京在住のイタリア人記者が大阪へ避難し、
日本人記者も多くが電話取材で済ませていると言う中、
現地取材を敢行するピオ・デミリオ記者の記事には
ぜひ注目してゆきたいと思っております。

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2 Responses to 東北地方太平洋沖地震:イタリア人記者が女川『原発ジプシー』に聞く

  1. knock 2011年4月11日 at 12:44 AM #

    海外メディアの記事、興味深く拝見させていただきました。続報等ありましたら、また紹介していただけると嬉しいです。m(_ _)m

    • chirico 2011年4月11日 at 7:46 AM #

      knockさん、お久しぶりです!
      続報あり次第…と思っているのですが、特に、このピオ・デミリアさんの記事は掲載誌の方針で定期購読料を払っている読者じゃないと読めない記事もあるんですよ…。
      でも私も、今後も注目してゆきたいとは思ってるんですが。

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