マフィアボスが半生を語る:ロベルト・サヴィアーノ【第二章】

大変、お待たせいたしました。
反マフィア作家ことロベルト・サヴィアーノによる、元カモッラ(ナポリマフィア)のボスへのロング・インタビュー。
やっとこさっとこの第2章であります。
第1章がまだの方は、こちらからどうぞ!

ナポリ 『マフィアボスが半生を語る:カモッラの台帳』

ボス
マウリツィオ・プレスティエリは、何もない所から生まれ出たボス達の一人だ。
リオーネ・モンテローザ…セコンディリャーノ地区の一画、そこがプレスティエリの人生の出発点であり、そして、終着点。
「わずかばかりのドラッグをさばいて初めて儲けた金で、あれをやってやろうって思ったんですよ。私らの界隈じゃ、まだ誰もやったことのなかった、あれ…。飛ぶことですよ。皆に言いふらしてね。俺は飛行機に乗るんだぞーって。家族の中でも誰も乗ったことはなかったろうし、私が住んでた界隈でも空の上へ行くなんてのはね。
カポディキーノ(空港)へ行って、国内線のチケットを買いました。行き先なんてどこでも良かった。ただ、ナポリから一番遠い所へ行きたかった。ナポリから一番遠い所って言ったら、私らの間ではトリノだったんですよ。興奮しきって飛行機に乗り込み、着陸し、飛行機から降りて。空港の中を一回りして、それから少しだけ外へも出て、それで、すぐに帰ってきたんですよ。戻った時は、界隈の者達全員に拍手で出迎えられてね。まるで、初めて宇宙へ行ったガガーリンみたいでした。セコンディリャーノ地区の者で、初めて飛行機に乗ったんですからね。皆が、こう訊いてくるんです。
“おい、痩せっぽっちよぉ、本当に飛行機ってのは雲の上まで連れて行ってくれんのかい?”」
町のチンピラが、がむしゃらに激しく回転するエンジンみたいになった…あるマフィア・ファミリーを浮び上がらせるためにだ。そして、そのファミリーは、ドラッグを中心に組織されてゆく。
「国がすぐに、私らのことを押さえることもできたんですよ。だけど、私らはあっという間に金持ちになり、権力を得た。合法的な経済が、私らの非合法な金を必要としてたんです。私らには才覚があった。社会の、間違った所に使ってしまいましたがね…。」
ナポリ-トリノ間を行く飛行機に宇宙飛行ほどの香りを感じ取った若者達は、飢えた成り上がり願望を抱え、それと同じぐらい初歩的なことに関し無知でもあった。
通称『パペレ・エ・マラーノ』ことラッファエーレ・アッビナンテ、後年、シッシオニスティ(ディ・ラウロファミリーからの分裂派閥)のボスになったこの男は、若い頃は小切手が何なのかさえ知らなかったとプレスティエリは言う。
「私の弟がハッシッシの取引きの際に小切手を切ったら、アッビナンテはそれを振り払い、まるで一杯食わされたってな感じで、こう言ったんですよ。
“俺は本物の金が欲しいんだ。何だ、この紙っ切れは?”
あれから20年経った今じゃ、株式やら石油の相場、金の価格について話してるんですからね。ビジネスマンになったってわけですよ。」

殺人学校
「止める者がいなかったから、私らはNo.1になったんです。恐れる物など何もなかった。」
セコンディリャーノ地区のファミリーらは金を増やしてゆく能力と共に、凶暴な軍隊をも育てていった。
ラッファエーレ・アッビナンテの息子フランキーノは人一人殺したことがなくとも、殺し方は学ばなければならなかった。
闘争劇の最中、銃を撃てる者が多いと言うことは力を意味するだけでなく、自慢になる。そして、なおかつ、それが安全さにもなるのだ。もう一つ言うならば、部下は、どれほど忠実な者でも裏切るが、息子は…血のつながった者は違う。それ故に、殺人学校があるのだ。
「クーパ・カルドーネ通りに白いフィアット126を止めて、そこでドラッグを売っていた若い男がいたんですよ。私らが雇ってたんですけどね。アッビナンテが息子に、この男を撃つよう言ったんです。大して手こずりゃしないからって。さぁ、行け、奴を利用してこい。さぁって。」
『利用する』と言うのは死体解剖報告書に書かれてあったのを、カモッラ達がそのまま使った言い回しだった。
「生け贄になった男に向けて、フランキーノは銃創が空になるまで撃ち続けました。武器を使うための…血の洗礼、その標的にしたんですよ。
“ほらっ。”って父親は、息子に言ってました。“殺るってのは簡単なことだろ。”ってね。」

コジモ・ディ・ラウロもまた、同じ洗礼を受けねばならなかった。
シッシオニスティ(ディ・ラウロファミリーからの分離派閥)の分裂闘争における主要ファミリーの跡目なのに、銃の撃ち方も知らなかったのだ。
「ボスにさせるには、人一人ぐらいは殺させなければならなかったんですよ。」
プレスティエリは、こう説明する。
「ある日、この跡目のためにファミリーは『的のウズラ』を用意したんです。」
『的のウズラ』とは簡単に殺せる標的のこと。丸腰で、じっとしている、狙われていることにも気づかない人間のことだ。カモッラ(ナポリマフィア)が人を殺す時は、大体いつもそんな状況でだ。
「ピカルディって名で、ディ・ラウロファミリーが跡目のために標的にした売人でした。
跡目のコジモは売人に近づいて行き、ピカルディの方は、挨拶か何か、一言声をかけられるのだろうと言った風情。しかし、コジモは拳銃を取り出し、撃ちまくる…が、かすり傷を負わせただけで、逃げられてしまう。つまり、とんだ無様を晒したわけで…。」
そして、この無様な一件は、セコンディリャーノ地区では禁句になったのだと言う。

残忍な話はまだまだ尽きない。
ディ・ラウロファミリーの構成員がシッシオニスティ(ディ・ラウロファミリーからの分裂派閥)の勝ち組側に移りたいと望んだならば、いまだに有効な簡単なルールがあるとプレスティエリは言う。
「自分の親戚を殺すんですよ。誰か一人選んで、撃つ。ファミリーに加えてもらうには、この方法しかない。騙していないって保証になるんですよ。」
マウリツィオ・プレスティエリは話しをする際、注意深く、分析しながら物を言う。こちらの目は見るが、挑むような風はない。いや、むしろ、この男の前にいると、物悲しさのようなものを感じる。
本来ならば、かなりのことが出来たはずの男が、まるでビジネスマンにでもなるかのようにマフィア・ボスになることを選んだのだ。
ビジネスマンとボス、カモッラ達にとっては同じものなのだ。

[ 第3章に続く ]

(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:La Repubblica 2011年02月08日






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