筆跡鑑定で本人確定:コーザ・ノストラと国家の密約

さて、当ブログでしつこく取り上げ続けている『イタリア国家とマフィアの密約』…
少しずつ、少しずつ、解明されております。

ヴィート・チャンチミーノ(写真:78才没):元パレルモ市長であり、コーザ・ノストラ(シチリアマフィア)組織員。1984年に逮捕され、懲役13年の判決。2002年11月死亡。

マッシモ・チャンチミーノ(46才):ヴィート・チャンチミーノ元市長の息子。実業家。1990年初め、父と共にコーザ・ノストラに協力していたが、現在は司法協力者として『コーザ・ノストラと国家の密約書』について暴露している。

マルチェッロ・デッルートリ(68才)。与党PDL所属の上院議員。1993年にベルルスコーニ現首相と共にForza Italia(がんばれイタリア党、現与党PDLの前身)を創立。2010年6月にマフィア組織加担の罪で7年の懲役刑を宣告されている。

サルヴァトーレ(愛称トト)・リイナ(79才):コーザ・ノストラの最後の首領。‘93年に逮捕され、終身刑で収監中。

ベルナルド・プロヴェンツァーノ(77才):サルヴァトーレ・リイナの相談役、後継者。‘06年に逮捕、終身刑で収監中。

イタリア 『チャンチミーノ、筆跡鑑定で本人のものと確認』

息子のマッシモ・チャンチミーノは嘘をついていなかった。
マフィアとイタリア国家の関係について、そして、ミラノでのコーザ・ノストラの事業について書かれた文書は、マフィア市長ことパレルモ元市長のヴィート・チャンチミーノ本人が書いたものだったのだ。
そのことが警察の科学捜査班によって証明されたのである。

息子マッシモが検察に提出していたヴィート・チャンチミーノの署名付き文書(上記写真がチャンチミーノ親子)。
マフィアと国家の関係について、そして、ベルルスコーニ現首相の企業でコーザ・ノストラが投資を行っていたことについて記された文書だ。
警察の科学捜査班は、同文書に残されていた署名がヴィート・チャンチミーノ本人の筆跡であることを証明した。
その他の文書については今後検証されることとなる。
文書は全部で3種類あり、第1の文書には『Milano 2』建設に関する取り決めが書かれている。
『Milano 2』とはベルルスコーニ現首相により1970年代初めに建設された衛星都市のこと。文書にはパレルモの建設業者ニーノ・ブシェーミやフランコ・ボヌーラらの他に、マルチェッロ・デッルートリ現上院議員の名前も連ねられている。
第2の文書は10か条から成る『修正密約書』。
コーザ・ノストラと国家が取り交わした同意を締結するため、チャンチミーノ元市長からトト・リイナに送られたもので、この中にはマフィアによる連続惨殺事件を終結させることも含まれていた。
第3の文書はイタリア銀行の元総帥アントニオ・ファツィオ氏に宛てられた手紙だ。
マフィアと国家間の交渉についての断片や、パオロ・ボルセリーノ検事殺害計画について書かれていた。

警察の犯罪予防本部科学捜査班から、これら3種類の文書に付されている署名は確かにパレルモ元市長のヴィート・チャンチミーノ(マフィア加担で有罪判決を受け、2002年11月19日死去)の筆跡であり、書かれた時期も息子マッシモが指摘しているもので間違いないと発表されたのだ。

今回の筆跡鑑定の結果は、パレルモ検察が行っている2件の捜査活動にとって重要なものとなる。
同捜査活動はマッシモ・チャンチミーノの自白を手がかりにして進められており、マッシモが隠匿していた父の書類や隠蔽事項は、アントニオ・イングロリア検事補佐およびニーノ・ディ・マッテオ、パオロ・グイド検事代理らによる捜査グループに提出されている。
ヴィート・チャンチミーノがイタリア北部での事業や、交渉での『汚れた』取り決めによって得た隠し財産捜索における重要な新裏付けとなるのだ。
なお、この『汚れた』取り決めは、軍警察の特殊作戦部隊の高官やコーザ・ノストラの幹部らによって取りまとめられたものとされている(容疑者らは全て否認しているが)。

ヴィート・チャンチミーノがミラノで行っていた事業については、今年2月1日、パレルモのウッチャルドーネ刑務所内にあるシェルター法廷での裁判において、息子マッシモが初めて公表している。
同裁判では、シチリアマフィアのボスの中でも策略家として長けていたベルナルド・プロヴェンツァーノの逃亡を幇助した容疑で、警察特殊作戦部隊の元将官兼民主治安情報部の指揮官であったマリオ・モーリ、その右腕のマウロ・オビヌー元大佐が罪を問われていた。
息子マッシモによれば、これらの話は70年代終わり〜80年代初めにかけて父親ヴィートから聞かされたとのことで、デッルートリ現上院議員や建設業者ニーノ・ブシェーミ、フランコ・ボヌーラを通じて、当時、若き実業家だったベルルスコーニ現首相が進めていたミラノ郊外の衛星都市建設事業に投資したと言うもの。

マッシモは父ヴィートが書き残したメモを解読しながら当時の経緯を説明しており、同メモには建設業者ニーノ・ブシェーミ、フランコ・ボヌーラや、デッルートリ現上院議員の名前や、『ミラノ2』の文字が記されている。
科学捜査班ではイングロリア検察官らが保管している同メモ書きと、その他のヴィート・チャンチミーノ直筆による公私に渡る文書を比較検証した結果、同一であることが確認された。

また、文書が書かれた紙の種類や製造された時期などの分析結果も同様だった。息子マッシモが検察官に証言した通りの時期に該当しているのだ。
ベルルスコーニ現首相の専任弁護士であり与党PDL所属の国会議員でもある二コロー・ゲディーニ氏が、2月に行われた公判最後にこんなことを言っている。
「マッシモ・チャンチミーノによる『ミラノ2』に関する証言は、事実や論理に基づく根拠に欠け、書類上どの点においても反論しえるものである。」
ヴィート元パレルモ市長が『sacco di Palermo(サッコ・ディ・パレルモ:1950〜70年代に行われた建築投機。規模の大きさはシチリア史上でもトップクラス)』で得た金の動きについて、パレルモ検察が幾軒の銀行を捜査したと考えるのは必至のこと。

トト・リイナの命令で続発していた惨殺事件を食い止めるため、マフィア・ボスらへの刑事免責と引き換えにマフィアと国家間で行われた交渉が、検察による第二の捜査によって明らかになりつつある。
その刑事免責と言うのは、例えば、マリオ・モーリ元将官とマウロ・オビヌー元大佐が告訴されている、マフィア組織への好遇措置容疑などのことだ。
モーリ元軍将官と、オビヌー元大佐の両名は1992年、コーザ・ノストラによる連続惨殺テロが終わろうとしていた頃、ボスらからの要求と引き換えに交渉を行なったと言われている。
この交渉で仲介役を果したのが、ヴィート・チャンチミーノ(コルレオーネ出身。同郷のトト・リイナやプロヴェンツァーノとは幼なじみ)とされているのだ。
トト・リイナが執り進めた『密約書』はアントニオ・チナー医師を介し、警察へ届くようヴィート元市長に手渡された。
この『密約書』に対し『修正密約書』が引き続き作られていたのだ。
つまり、ヴィート元市長はマフィアに対する『carcere duro(カルチェレ・ドゥーロ:厳重収監法:刑務所法追加第41条(犯罪組織構成員やテロ犯罪者のための特別法:その他の犯罪構成員らとの接触規制、面会の回数および様式の制約、屋外での運動制限、通信の検閲等)の通称』の廃止や、アメリカ式の裁判官選任システムへの改定、イタリア南部における政党結成などを求め『密約書』の内容に手を加えたのである。
マンチーノ、ロニョーニ(当時の内務大臣および防衛大臣)の名前も出てくるこの『修正密約書』が書かれたのは、おそらく1992年7月19日、ボルセリーノ検事がコーザ・ノストラにより爆殺された日だ。
科学捜査班の分析結果により、『修正密約書』に見られる筆跡はヴィート・チャンチミーノ元市長のもので、脇に貼られたポストイットには《こちらの方よりモーリ将官に提出》とメモ書きされており、このポストイットが製造されたのも1986〜91年であることが確認された。

そして、科学捜査班がパレルモ検察に提出した膨大な鑑定書の中に見られる3つめの検証結果、ヴィート元市長が署名をした長文の手紙について。
『ファツィオ総裁殿』と記され、当時のイタリア銀行の総裁に宛てられた手紙で、ヴィート元市長からの祝福の言葉と共に、アンドレオッティ派だったサルヴォ・リーマ欧州議会議員やジョヴァンニ・ファルコーネ、パオロ・ボルセリーノ両検事らの殺人事件を解読するための鍵について書かれている。

ボルセリーノ検事殺害については、次のとおり。
《マフィアによる、そして、その数えきれないほどの下部組織よるテロ攻撃は、モーリ元軍将官が指揮を取った第一回目の悪辣な阻止計画の後、ボルセリーノ検事が殺害されたことにより中断されたと言う事実。おそらく、今回の取り決めに対し頑に反対していたであろう…》

文末に記された署名は、警察の鑑定の結果、ヴィート・チャンチミーノ元市長の筆跡であると確認されている。

(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:
La Repubblica 2010年9月15日


イタリアが不思議なのは
ここまで確定しても
今のところ大きなスキャンダルとして
騒がれていない…と言うあたりでしょうか

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2 Responses to 筆跡鑑定で本人確定:コーザ・ノストラと国家の密約

  1. P1 2010年9月23日 at 12:31 AM #

    いつも詳細な解説ありがとうございます。
    41BISの説明とか助かります。

    アンドレオッティ、ベルルスコーニと支配者は相変わらず元気ですね。カギを握っている二人が全てを明かせばイタリア現代暗黒史の謎のほとんどに答えが出るでしょうけど。 ベルルスコーニはすでに70年代から逃げ続けていますね。この裁判とミルズ裁判で企業家ベルルスコーニの真実が暴かれれば、彼と彼の作り出した世界はガラガラと崩壊するでしょうし、失敗すれば、大統領(もしくは永久上院議員)になって逃げ切るでしょうね。

  2. chirico 2010年9月24日 at 7:22 AM #

    P1さん、こちらこそコメント、ありがとうございます。
    そうかぁ、41bisの説明が助かる方もいるんだなぁ…と。いやいや、励みになります。

    ベルルスコーニ政権の支持率も30%まで落ちたようですし、ホントにイタリアも何かが変わりつつあるなぁと言う気配が感じますねぇ。
    支持率をあげつつあるプーリアのゲイ州知事も、ぼちぼち首相候補としての名乗りをあげているようだし…。

    でも、ベル首相が失敗したら、大統領(もしくは永久上院議員)になって逃げ切るって…良い読みしてますねぇ。

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