マフィア交渉、伊首相の名が遂に…:コーザ・ノストラと国家の密約

イタリア近代史の大いなる謎と言えば、コーザ・ノストラ(シチリアマフィア)とイタリア国家が交わしたとされる密約でしょう。
昨年あたりから、ぼちぼちと真実が明かされつつあるのですが、ついにベルルスコーニ伊首相の名前が具体的に出てきたようです。
古い事件で、登場人物も多く入り組んでおりまして…とりあえず、初めての方は下記の人物紹介からお読みください。

ヴィート・チャンチミーノ(78才没):元パレルモ市長であり、コーザ・ノストラ(シチリアマフィア)組織員。1984年に逮捕され、懲役13年の判決。2002年11月死亡。

マッシモ・チャンチミーノ(46才):ヴィート・チャンチミーノ元市長の息子。実業家。1990年初め、父と共にコーザ・ノストラに協力していたが、現在は司法協力者として『コーザ・ノストラと国家の密約書』について暴露している。

サルヴァトーレ(愛称トト)・リイナ(78才):コーザ・ノストラの最後の首領。‘93年に逮捕され、終身刑で収監中。

ベルナルド・プロヴェンツァーノ(75才):サルヴァトーレ・リイナの相談役、後継者。‘06年に逮捕、終身刑で収監中。

パレルモ 『チャンチミーノ息子、マフィア絡みの事件に首相の名を』

5才になる息子への脅迫状が届いて以来、もうこれ以上は話したくないとマッシモ・チャンチミーノ(写真)が言っている。ここ最近までは話していたのだ。母親のエピファニア・スカルディーノさんが、初めてパレルモの裁判官らに語ったように。
エピファニアさんは、2001年に夫の『ドン・ヴィート』が送った『密書』の内容について認めた。
この『密書』は『親愛なるラグ』と記され、ベルナルド・プロヴェンツァーノに宛たもので、シルヴィオ・ベルルスコーニ現首相について明白に言及された箇所があるのだ。

2001年の選挙。同時期に行われた交渉により入金された1億リラを配分しようと言う誘い。
文書はトップシークレットだが、それを読んだ者ならばリラをユーロに換算しながらそんな風に考えるだろう。
《ベルルスコーニから受け取った1億リラは、四分の三はベネデット・スペーラに、残りは息子のマッシモに》
そして、
《親愛なるラグ。我らが盟友達に馬鹿げたことを続けないよう進言する必要がある…そして、法的な問題を解決する必要も…》
2001年のいつの選挙なのか正確な日付が確認されたなら、この文書はかなり気がかりなものとなるだろう。ちなみに、総選挙が行われたのが5月13日、シチリア地方選挙は6月24日だ。
また1974年、ベルルスコーニ現首相が建設業界に一大勢力を築く中、ヴィート・チャンチミーノが建設事業に再投資した汚れた金の流れについても曖昧に言及されている。
この事業では2件の名義貸しが企てられ、当時、ミラノで裕福な実業家と名乗っていた2名の建設業者が絡んでいた。
1人はアントニーノ・ブーシェミで、服役中に死亡。もう1人のフランコ・ボヌーラは2008年に20年の懲役刑を受けている。
当時のパレルモ市長であったヴィート・チャンチミーノは、この2人のことを皮肉まじりに《B&B》と呼んでいた。

マッシモ・チャンチミーノは今回確認された『密書』でもって、新たな扉を越えることとなる。
『密書』に登場するスペーラとは、プロヴェンツァーノの当時の有能な手先であった。
母であるエピファニアさんの助けを借りての新たな一歩だ。
年老い、病み、しかしながら、時宣をえた疑惑でもって夫の残した書類ケースを見つけ出し、その中味を息子マッシモ・チャンチミーノに託したのだ。
その疑惑と言うのは、なぜ、カルタニセッタ検察がマッシモの親族らに対し家宅捜査命令を出した2日前に、すべてが起きたのだろうか…と。

セルジオ・ラーリ検事やカルタニセッタの検事代理らからの疑惑が見え隠れするようだ。
検事らには検討すべき資料が山ほどあるが、今回の『密書』に関するものはない。
ヴィート・チャンチミーノの書類の方はパレルモのニーノ・ディ・マッテオ検事らのオフィスでしか話題にされていない。そして、そのディ・マッテオ検事らの方はと言えば、初めてチャンチミーノ未亡人の口からヴィート・チャンチミーノとベルルスコーニ現首相の直接的な関係についての確証が得られたのだろう。
「ええ。70年代、夫はミラノでベルルスコーニと会っていました…。でも結局、ベルルスコーニに裏切られたと思っていたようですが…。」
今は、適正に検証される必要があるだろう。
まずは『密書』が書かれた紙が2001年当時のものかどうかの分析が、警察の化学捜査班に委託された。2001年と言えば、すでにユーロになっていたものの、まだ多くの者が仕事の話はリラでしていた頃だ。
また、あのデッルートリ上院議員の公判を担当した裁判所では、マッシモ・チャンチミーノには矛盾点があると見なしている。そのため、全てはマッシモの証言への信憑性にかかっているのだ。

6年前から、ベルルスコーニ現首相がヴィート・チャンチミーノに渡した2千5百万リラの小切手の影が浮上してきている。マッシモ・チャンチミーノと、その妹ルチアーナさんとの間で交わされた電話から盗聴された情報だ。
電話では、パレルモで『Forza Italia(がんばれイタリア党)』の10周年記念祭が行われ、ベルルスコー二現首相も参席していたのだが、ルチアーナさんは最前列の席がなかなか見つからなかったと激怒しており、マッシモの方は盗聴されているとは思いもせず、小切手に関する証拠をちらつかせてやれば良かったのにと言わんばかりだった。
密書に小切手は企てられた。
書類は一向に出てこない。
しかし現在、マッシモ・チャンチミーノが訂正を加えながら話題に出してきている。
「小切手ではなく現金でした。『密書』には2千5百万リラと書かれていました。私がピーノ・リパーリ(コーザ・ノストラ組織員)の友人の所へ受取りに行ったんです…。」

当時の、まだ若かりし息子が父の共犯者となった出来事について、自供している最中だったのだ。
パレルモ検察が規定の一歩を踏み出すには、まだ為すべきことが山ほどあり、マッシモ・チャンチミーノには不法援助、資金洗浄などの容疑で起訴されている。
「裁判を進めてください。私が関心を抱いているのは真実を語ることだけで、今となっては…。」
マッシモは5才になる息子宛に銃弾入りの脅迫状が届いて以来、初めて裁判所へと赴いた。
8月2日午前、涙ながらに現れて息子の警護を要請し、これ以上は何も明かさないことを自身に誓った。
「こうやって口を閉ざすことで、私も『英雄』になるでしょう。」
ヴィットリオ・マンガーノのことを指しているのだ。
通称『アルコレの馬番』。マルチェッロ・デッルートリ上院議員が英雄と見なしているコーザ・ノストラ関係者だ。
マッシモは昨日、妻子と共にパレルモを出る前に、警護官2名に向かって同じ言葉を繰り返していた。
『強化措置』のもと、家族は防弾チョッキを着ていたと言う。

(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:Corriere della Sera 2010年8月11日

不思議なのは、今回の記事…今のところイタリアの大手1紙でしか報道していないんですよ。
奇しくも、現在イタリアでは解散総選挙だ、選挙内閣だと騒がれている最中でして…
けっこう微妙な瀬戸際にいるんでしょうかね、この国は。


いよいよ、ベルルスコーニおろしが
始まったんでしょうか…
とにかく、早くきちんと落着いて欲しいもんです。
(む、無理かなぁ…)
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4 Responses to マフィア交渉、伊首相の名が遂に…:コーザ・ノストラと国家の密約

  1. TOLOS 2010年8月16日 at 6:50 AM #

    お久しぶりです
    日本の高速道路休日1000円を活用して遠出しておりました。
    ベルルスコーニはじめ戦後のイタリアを陰で牛耳ってきた実力者たちはしだいに亡くなりつつありますが、
    その先にイタリアの未来はあるのか
    過去の歴史では国が倒れそうになると新たなリーダーが登場することが多いですが
    アメリカのオバマ大統領もそんなリーダーではないかと感じますが はたしてイタリアはどうなんでしょうか・・・すでにローマ時代に運を使いはたしてしまったか・・

  2. chirico 2010年8月16日 at 9:34 PM #

    遠出は長崎ですか、TOLOSさん!
    グラバー邸には行ったことがあるのですが、そんな石柱が近くにあったとは…

    現在、コッシーガ元内務大臣も入院中だし…まさに世代交代が始まりつつあるのかなぁ…と。

    イタリアの運は…そうですねぇ、プーリアのニキ・ヴェンドラなんかの支持が高まってるんで、まだまだ捨てたもんじゃないかもしれませんね。
    ただ、『プーリア』ってあたりが……一筋縄ではいかなさそうですが。

  3. P1 2010年9月8日 at 10:02 PM #

    初めまして
    いつも楽しく読ませていただいています。
    マッシモ・チャンチミーノが口を閉ざしてしまったのは残念ですね。ベルルスカのマフィア関連の裁判は、なかなか切り込めないだけに期待をしていたのですが…
     アンドレオッティのようにはなってほしくないですね。

    それにしても現政権はマフィア取締り強化をしてますが、コルレオーネ派との繋がりを断ち切るためにやっているでしょうか。本気でマフィアと決別するとは思えないけど、意図がいまいち分かりません。
     そもそもコルレオーネ派って、現在どれだけ力があるのでしょう。

  4. chirico 2010年9月10日 at 7:14 AM #

    P1様、初めまして。ご愛読&コメントをどうも有難うございます。

    コルレオーネ派と言うよりは、やはりコーザ・ノストラとしてくくられることの方が多いのですが、首脳部を失い、去年あたりから目に見えて組織自体が統制を失っているように思えます。

    また、あれほど強固だったベルルスコーニ政権に、現在、揺らぎが見え始めているのも、それと関係があるのかどうか…

    9月に総選挙…なんて話も出ていましたから、今、まさにイタリアも正念場なのかもしれません。

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