障害児の母親、黄金郷をめざす

イタリアって国レベルでは、汚職やら脱税やらマフィアと政界の癒着やら、あまり良いニュースは聞こえてこないんですが、個人レベルだと、妙に(失礼)良い話があちこちにあるような気がします。
本日は、障害児を抱える母親達が、自分達が先に逝った時のために…と言うお話です。

ミラノ 『障害児のための黄金郷、家族が支援できなくなった時に』

ミラノの町の母親33名が、自分達の子供のために黄金郷を夢見ている。
そんなことを思わない母親など、この世にいないって?
しかし、彼女達は普通とは違う母親なのだ…その子供たち同様に。
まずはトニー、40才になる。ソニアは32才で、その他全員、若く、そして心身に重度の障害を抱えているのだ。
現在は、医師や教師らが細心の注意を払う中、ドン・ニョッキ施設で一日を過ごしている。しかし、将来はどうなるのか…。両親、家族がこの世を去った日には、彼らはどこへ行けばいいのか。
「何処かここかには落ち着くだろうって、もう何回聞かされたことか。でも、一人の母親として、『何処かここか』なんかじゃ駄目なんですよ。」
トニーさんの母親で、教師で、ムルジア出版社専任の作家でもあるマリーナ・フォレンツァ・エンリケスさんはこう言う。
こうしてマリーナさんはドン・ニョッキ施設で知り合った他の母親共々、黄金郷を夢見るようになったのだ。

『ヴィレッジ・エルドラド』− 2005年、こうして『Durante noi(私達が生きてる間に)』財団が生まれ、マリーナさんが理事を務めることとなった。
現在ではミラノ市、マジェンタ市や、ドン・ニョッキ財団からの支援を受け、ヨーロッパでも二つとない企画を実現させようとしている。その名も『ヴィレッジ・エルドラド』。
障害を持つ若者40名が地元の人々に溶けこんで生活してゆく場所となり、ミラノ近く、人口2万3千人の町マジェンダに築かれる予定だ。
宿泊寮のほかに、スーパーマーケットやおもちゃライブラリー、温室、社会人大学、また、青空マーケットや小規模な職人工房を置けるような施設を備え、寮のそばに設けられる馬の調教場は一般公開されることとなっている。
そこでは障害者らは、まず第一に、住民なのだ。患者であることは二の次となり、ヴィレッジへの訪問は近親者だけではなく、若者でも高齢者でも家族連れでも、この界隈に住む人々にとって可能となる。
マリーナさんは次のように説明している。
「面白そうなことがあるから人々が行ってみたいと思うような場所、私達の子供たちが今まで知りえなかった日常生活の片鱗を味わえる場所を作りたいんです。例えば、スーパーマーケットなんかで働ける子供たちもいるでしょう。例えば、お客さんが買った品物を袋に詰めるのを手伝うとか。よくアメリカの学生がやってるようなことですよ。それで、ちょっとチップがもらえるような。」

施設プロジェクト − 母親達のアイデアを基にして、ミラノの設計事務所『Pensa e Drago』が、同ヴィレッジの設計を手がけている。
障害者らの専用エリアには二つの複合施設が設けられ、庭をはさみ、ガラス張りの通路で行き来できるようになるのだ。
各施設には20名用の個室が設けられ、また、障害が軽度の10名についてはヴィレッジ入口に建つ施設内で共同生活を送ることとなる。
何度も挫折しそうになった母親達を計画初期から励まし続けてきたドン・ニョッキ財団が、完成後の施設を運営することとなる。

立ちふさがる問題 − プロジェクト実現に向けてマリーナさんと、もう1人の母親ヴァンダ・ポッビアーティさんは2年もの間、ミラノ市や近隣のブッチナスコ、ロー、セスト・サン・ジョヴァンニ、コルシコの町々、果てはアルコレ市の行政にまで訴えに行った。
「どこへ行っても、素晴らしいアイデアだと褒めた讃えられるんですが、そんな大きな施設を建てられる場所などないって言われるんです。少なくとも4万平方mは必要なんですが。」と2人は言う。
頼りにならない、腹立たしいだけの役人もいて、持ち回りの評議員とのアポを取るためだけに1週間を費やしたり…。
しかし2008年、転機が訪れる。
ロサンジェルス生まれのマリーナさんは、マジェンタの隣町コルベッタの学校で言語プログラムを手がけていたのだが、同僚の紹介でマジェンタの福祉担当評議員カルロ・モラーニ氏と知り合えたのだ。
当初は、通り一遍のありふれた出会いにしか思われなかったのだが、モラーニ評議員はマリーナさんの話に耳を傾け、数ヶ月後には連絡をくれた。それは、今までどの政治家もしてくれなかったことだった。
電話の向こうでモラーニ氏はこう言った。
「土地が見つかりましたよ。」
こうして夢は現実のものとなり始める。
数日前、ヴィレッジはマジェンタ市の新たな行政計画として承認された。ミラノ市もまた、家族支援のために参加することとなった。
「このフロジェクとはまさに開拓者的なものとなったでしょう。だって、『障害者の親がいなくなった時の』問題を解決すると言うのは、近代都市にとってはまさにチャレンジですからね。」と話すのはミラノ市の保健担当評議員ジャンパオロ・ランディ・ディ・キアヴェンナ氏で、ミラノ・エキスポで同プロジェクトを紹介し、財政計画に組入れられるようにと画策しているのだ。

投資 − 同プロジェクトには少なくとも1,600万ユーロ(約17億6千万円)かかると見られ、基金募集はすでに始められている。
インフォメーション窓口は、電話は02.40.30.80.81もしくは320.15.64.093で、ネットではwww.durantenoi.it(編集部注:現在、サイト内容を更新中)で各問合せを受け付けている。
道のりはまだ遠く、家族に猶予された時間は少ない。
2005年、同財団を創設した母親達は36名だった。
「これまでに、障害を持った子供3名と、その親3名が亡くなりました。次から次へとがっかりすることがあって。でも、あの世からニョッキ神父が私達を見守ってくださっていますから。だって、ニョッキ神父がいらした頃の子供たちは、今もそのまま残っているのですから。昔、ニョッキ神父がどうにもならない難問だって言っていたことが、今は素晴らしい現実となっています。私達はそんな風に上手くいってくれることを願っているんです。」

(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:Corriere della Sera 2010年6月10日

確か去年ぐらいに、『 Si può fare(やればできるさ)』と言うイタリア映画があったかと記憶してます。
精神病患者の方々が寄木細工業に取組み、様々な困難を乗り越えながら、労働する能力や人間性が認められてゆくのをユーモラスに描いた作品だとか。
今回の記事のプロジェクトも、そんな風に上手くいってくれると良いのですが。

しかし、施設建設の際には、
くれぐれもマフィアが絡んできませんように…
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6 Responses to 障害児の母親、黄金郷をめざす

  1. ponta 2010年7月8日 at 8:37 AM #

    とてもいいお話しですね。
    時折、財政難のふるさとを企業家として成功した方
    が里帰りして町を立て直したとかのニュースは聞きますが、これは、まさにそんな人達のおかあさんレベルのパワーですね。私達が今何が出来るか?考えてばかりの私に力を与えるメッセージです。今の若いお母さんたちにもこのパワーの源、子育ては自分自身も育てるということをもっと体感してもらいたいと思っています。ブログで紹介させていただいていいですか?

  2. chirico 2010年7月8日 at 6:19 PM #

    pontaさま、コメントをありがとうございます。

    毎日、イタリアの新聞を眺めていても、なかなか良い記事、ポジティブなニュースにに遭遇することってないんで、今回のはぜひ紹介しなければと思ってました。
    W杯ニュースの合間をねらっていたら、イタリア紙にオリジナル記事が掲載された日から、少々時間が過ぎすぎてしまいましたが…

    ブログでご紹介していただける件、光栄です。よろしくお願いします。

  3. aoi 2010年7月9日 at 12:33 AM #

    素晴らしいお話ですね。
    いつも興味深い記事をありがとうございます^^

  4. TOLOS 2010年7月9日 at 4:22 AM #

    子供が成長し、親から離れていけばいくほど、この子に親として充分なもの、思考を与えてこれたかな、と自問自答するもんですよね。
    この記事でまっ先に思ったのが、くれぐれもマフィアが絡んできませんように Chiricoさんと同じでした

  5. chirico 2010年7月9日 at 6:17 AM #

    いえいえ、aoiさん、こちらこそ、コメントを有難うございます。
    ホントに励みになるんです〜。

  6. chirico 2010年7月9日 at 7:08 AM #

    あぁ、やっぱりTOLOSさんも…

    この手の話で、「マフィアが絡んできませんように…」って、複数名の外国人から真っ先に思われる国なんですねぇ、イタリアって…

    そして、イタリアの若者就職難なんかを思えば、ふつうの親御さん達でも、自問自答せざるをえないだろうな…なんて思ってしまいます。

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