イタリア若者、親離れ事情

イタリア語でも、辞書を引いて出てこないような単語は、だいたい最近の社会問題・現象にまつわる新語だったりするんですが。
そんな単語の一つに
『Bamboccioni(バンボッチョーニ)』
と言うのがあります。
意味としては、こんな感じ。
「それなりの年齢になっても親元を離れず自活しない子供達のこと。なかには親に養われ続けている者もいる」
これ、イタリアではけっこう社会問題になっております。
これからイタリア語学留学なんかを考えてる方は、覚えておくといいですよ。きっと、授業で出てきますから。

イタリア 『欧州のすねかじり、親離れの時は』

ブライアン(26才)がすっかり諦めたのは、『ケルトの虎(1995年から2007年まで続いたアイルランドの急速な経済成長を指す表現)』が奇跡を起こさなくなった時だった。
「それでも、まだダブリンで一人暮らしは続けてたんです。両親は喜びませんでしたけどね。」
奨学金を取得し、2年前から仕事もしている(コンピューター技師で、派遣だが高収入)。現在はグラスゴーに住み、今後もここに留まる予定だ。
「もし後戻りしたら、母親の所へ戻ってしまうでしょうね。非常に楽ですから。同居してた時はベッドメイクまでやってもらってました。今、思い出すと恥ずかしいですよ。」

ヨーロッパで、親元で暮らす20〜30代の若者の割合の高さから言えば、イタリア、スペインと肩を並べているのはアイルランドだけだ。
イタリア70%、スペイン72%に対し、アイルランドは61%。
一方、フランスは35%で中間と言ったところ、イギリスは28%で若者達は自立への道を突き進み、スイスでは実家のソファーに寝そべってぬくぬくとしている若者達わずか18%にすぎない。
先日、イタリア北東部トレント市の裁判所が、大学をなかなか卒業せずにいる無職の娘(30才)の父親に対し、娘の扶養義務があるとする判決を下したことが話題になっていた。
またブルネッタ行政刷新大臣は、18才で成人したら親元を離れることを義務づける法律の制定を訴えており、イタリアの一般家庭ではヨーロッパにおけるこの手の事柄の違いが良く分かる図表を見比べているのだ。
違いが出ているのは福祉システム(就学、就職希望者らに国からの助成金がなく、自宅待機を余儀なくされることが多い)や習慣、家庭モデル、教育レベル、就学期間(イタリアでは大学を卒業する年齢は25〜30才がほぼ通常)などである。

ヨーロッパの若者達の間で、家から離れたいと思う者は親元からできるだけ遠くに行こうとするし、ヨーロッパの交換留学プログラムに参加したことのある若者達のブログにはこの手の「度胸ある」物語が良く書かれている。
これは偶然ではなく、また、イタリアやスペイン、アイルランドで親元を離れ自活している若者達が少ないのは、経済的な状況や福祉システムがあまりにも違いすぎることに端を発しているのも偶然ではない。
つまり、これら三ヶ国に共通するのはカトリックを主な宗教とし、子供が親元を離れるのは結婚する時と言う考えがいまだに家庭に定着しているのだ。
交換留学プログラム『Erasmus』から生まれたオンライン新聞『cafebabel. com』は六カ国語に翻訳され、ヨーロッパの若者達に向けて発信されており、同新聞を運営するパリ在住のアレクサンドル・ヒューリーさん(31才)は次のように話している。
「僕らの所に立ち寄ってくれた友人達と話していて思ったんですけど、学生期間の長さによるんですよね。フランスの方がぜんぜん短いし、ドイツやイタリアはかなり長いんです。イタリア人が親元を離れるのって、たいてい恋人と同棲する時ぐらいですよ。でも、フランスやイギリスだと小さいワンルームを借りたり、学生同士で共同生活したりするのが普通ですね。」

文化的な理由より、経済・社会的な理由の方が大きいと話すのはキアラ・サラチェーノさん。ヨーロッパにおける家族、職業、ソーシャルネットワークに関する比較レポートを、他2名との共著で初めて編纂した女性だ。
「イタリアでは、スペインやギリシアのように、生活環境を整えると言うことの大部分は家族に委ねられていて、その家族の大部分は、親元を離れて暮らす子供に仕送りできるような余裕はないんですよ。
例えば、北ヨーロッパなんかだと奨学金は支給方法も幅広く基準も様々で、若者のためのきちんとした福祉もあるし、子供が親元で暮らし続けるのは異常なことだと見なしているんです。
不動産の市場にも違いが見られますね。賃貸物件を探すのはもっと簡単だし、若者にも手が届く。だから親元を離れてゆくんですよ。」

『Isae(経済分析研究所)』の資料によれば、ヨーロッパでは親元を離れるかどうかの選択は、派遣社員やパートタイムをも含めた仕事が基準となっている…つまりは、どれだけの収入を得ているかが基準となっている面があるのだ。
収入を得ている若者達の場合、親元で暮らしている割合はイタリアだと70%から60%に下がり、スイスでは12%にまで減り、アイルランドでは57%。こうして巣立ってゆくわけである。
そして、契約派遣社員の普及の度合いとなると、イタリアやスペインで企画プロジェクトなどのいわゆる臨時仕事と言うものが波及したのはここ何年かのことで、それらが20〜30代の自立をくじいている。
また、イギリス人の若者が一人暮らしをしようと思えば、借金することも部屋を借りることもできるようなシステムが用意されており、スイスやフランス、アイルランドも同様。しかしながらイタリアやスペインでは、自分達の持ち家か親戚などの家を無料で借りることの方が主流なのだ。

昨今の不況も状況を難しくしている。イタリアだけとは言わないが、わずか数年の間に親元で暮らす若者達の割合は6%も増加しているのだ。
『Isae(経済分析研究所)』によれば、こう言った状況はまだまだ続くであろうし、地方小都市に住む者や卒業まで間がある学生、男子、一般的には南部の若者達にとっては不利な状況となる。

サラさん、キコさん、ルサさん、レイレさん、マリオさんの5名は、パリのマンションで共同生活をする22〜26才のスペイン人だ。彼らはブログにこんな風に綴っている。
「もし、あのままマドリッドにいたら、親元を離れるなんて不可能だったでしょうね。こう言う生活を始める際に、それぞれの親が納得して支援をしてくれたんですが、それは親達がフランスだったら何とか職が見つかるんじゃないかって分かっていたからなんですよ。この不況のせいでスペインが大打撃を受けた後でも、フランスならってね。それから、母国語がスペイン語だってことも助けになるだろうって。」
イタリア、スペイン、ギリシアとイギリスや北欧を比べるならば、それぞれの若者達がおかれた状況にどれほどの違いがあるかは資料から見て取れる。
『Isae(経済分析研究所)』による最新データ『成人の生活状態における変遷』によれば、子供が親元を離れる理由としてはいまだに第1位は『結婚(アンケート回答者の43.7%)』であり、第2位が『自活する必要にせまられて(わずか28%)』だった。
一方、親元に居座る理由としては第1位が『経済的理由(47.8%)』で、第2位が『親元にいるのが楽だし、自由にできるから(44.8%)』。また、アンケートの対象者が19〜39才と幅広いためデータ結果に曖昧さがあるようだが、『まだ学生だから(23%)』と言う理由も出ている。
親から巣立つのに腰が引けているのは特に男性の方で(家事を手伝う必要もないし、自由気ままに暮らせるから)、7.1%が一人暮らしをする気がないと明言している。なお、同様の理由をあげた同年代の女性は4.9%にすぎない。  
なぜヨーロッパの北と南で、これほど大きな違いがあるのか?
リヨン大学で『ピーターパン・シンドローム』を専門に研究しているグループが主張しているように、問題は幼年期や教育モデルにあるのか?
ノルウェーでは子供の70%が3才以下から保育園に通い始め、60%以上が12才までに親元から離れた生活を経験する(サマーキャンプや宿泊授業などのため1週間程度)と言うのが真実ならば、やはり、まったくその通りなのか。
食習慣についてのアンケートによれば、イタリアでは56%の母親が子供の性別を問わず料理を教える必要などないと答えている。
「キッチンを汚されてしまうし、自分でやった方が良いから。」と。
(2010年1月18日 La Repubblica)

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ただ、なかには『共同生活』って言う意味で上手くいってる親子なんかもあるみたいですけどね。
知り合いのイタリア人男性・30代前半独身・両親と同居…と言う人なんかは、家の中でちょっとしたお嫁さん並みに立ち働いてますよ。
料理もえらい上手で。

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4 Responses to “イタリア若者、親離れ事情”

  1. 東京育ち就活中 2010年2月1日 at 1:45 PM # 返信

    そもそも家を出ないと一人前で無いという考え方自体が私にはどうしても理解出来ません。
    親元でくらしても収入の一部を家賃としてを親に払ってる人もいるし、いたら邪魔になるくらい狭い家というのが前提にあったりするんでしょうか?
    親元を離れない事を単なる甘えとして処理する考え方は短絡的すぎます。
    合理的に税金や家賃などを考えれば、親と同居した方が負担が軽いので双方にメリットがあると思うんですけども。
    そもそも中間富裕層あたりには分からないかもしれない話ですけども。

  2. chirico 2010年2月1日 at 7:12 PM # 返信

    東京育ち就活中さま、コメント有難うございます。
    イタリアの場合はですね、まず、『世話焼きマンマ』のイメージが強いんですよ。だから、

    「子供がいつまでも親と同居している」

    つまり、

    「至れり尽くせり世話を焼かれているに違いない」

    と言うイメージは生まれやすいでしょうね。
    (あくまでもイメージですよ)

    それからニュースの傾向としては、北欧の福祉システムや親子関係と比較して、
    「イタリアはこんなに駄目なんだ」と言う論調にしたがる向きもありますね。
    これに対しては、知り合いのイタリア人が
    「北欧は子供の自立が早すぎて、親子の絆が薄いから自殺が多いんだ」なんて、反論していたこともありますが。

    記事内にあったように、いろいろな社会システムが若者の自立を助けていないのは確かなんで、こうやって社会問題にして、改善を図らせようって言うのも狙いでしょうかね。

    「家を出ないと一人前じゃないのか」と言う考えに対してはですね、周囲を見てると、人によるな〜って思えてしまいますね。
    中には、3世帯同居で、働き者のお嫁さん並みに立ち働いていて(男性なんですけどね)、これじゃ親の方で手放したくないだろうな〜って人もいますからねぇ。

  3. はるか 2010年2月2日 at 3:27 AM # 返信

    NYの場合、家賃が高いので…という理由でこういう男性が増えています。でも、やっぱり同居してる男性はお母さんに下着まで洗濯してもらってたりして、付き合う女性からは不評なことが多いですねー。南欧、中国系が多かったですが、今や色んな人種・民族で見られます。個人的に、働き始めたら一人暮らしくらいして欲しいと思いますが、そうもいかないんでしょうね。でも元カレが一軒家を買って、下の階に両親を住まわせて料理・掃除・洗濯をさせているのには引きました…

  4. chirico 2010年2月2日 at 7:38 PM # 返信

    はるか様、コメント、そして貴重な NY情報をありがとうございます。

    やっぱり、そちらでも南欧の男性が、この手の話題に登場しやすいか〜

    だけど、その元カレの話…
    むちゃくちゃ強烈ですね〜
    わたし、野次馬気質なもんですから、かなり興味を持ってしまいました。

    そうそう、今回の話題ではイタリアの某大臣が、
    「昔、私もずっと同居していて、母にベッドメイクまでしてもらってた」なんて言いつつ、
    「年金の予算を削って、その分、若者達に月々支給すれば、別居して自活できるようになる」なんて提案して、首相に一笑されてましたが。

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