もしも外国人がいなくなったらイタリアは…

イタリア南部ロザルノ市では、アフリカ人による暴動が地元民との衝突に発展し、現在、これがまた人種差別問題へと発展…。
けっこうな大問題となっております。
もはや移民なしでは社会が成り立たない…とまで言われているイタリアなんですが、今回の事件を受けて一般紙に、
「もしもイタリアから外国人がいなくなったら…」
と言う内容の記事(と言うか、もう完全に短編小説ですね、これは)が載っておりました。
けっこう面白いですよ。

 

 

イタリア 『大変だ!周りから外国人がいなくなっちゃった』

昨日の朝、7時頃だったか、わたしは黒んぼを撃つのにライフルを買おうと思いたった。
だけど、その前にオレンジジュースを飲んでおきたかった。新型インフルエンザであれ普通のであれ、ビタミンCを取っておくに越したことはない。
しかし、キッチンにオレンジジュースはなかった。
「ペルー!」と呼んでみるが、返事はない。ペルー人のお手伝いを雇っているんだが、家中探しても見当たらない。ペルーが寝起きしている階段下の物置部屋にも姿はなかった。
「また女房が休みを与えたのかな?正月休みの後にか?」と思ったが、女房は寝ていたんで、起こさずにおいた。
わたしは朝飯を摂りにカフェへ行くことにした。どちらにしろライフルを買いに出かけなければならないのだ。それに角の市場へ寄ってオレンジも買おうと思い、わたしは外に出た。
しかし、カフェでもオレンジジュースは売り切れだった。
「仕方がないな。じゃ、どうも。」と言って店を出たが、店の前には、いつもいるはずの物乞いジプシーの姿が見当たらなかった。
しつこく物乞いして稼いだおかげで、まだスキー旅行から戻って来ないのかな。ジプシー連中め、みんな大金持ちときた。でも、わたしは、もうライフルを買うんだ。ジプシーの連中も撃って良いんだろうな。それとも撃って良いのは黒んぼだけかな。調べてみなけりゃ。
市場が出ている広場へと着き、わたしは女房が良く行く店へと向けた足を急に止めた。
変だ。店がない。だいたい、市場そのものがない。
困ってウロウロしているご婦人方を除けば、まるで日曜日みたいに広場は空っぽだった。おい、今日は火曜日だぞ。
わたしはキオスクへ行き、
「あの、今、広場に行ってみたんだが、市場はどこにあるんだい?」と聞くと、キオスクの男は肩をすくめて、こう答えた。
「どうしたいって言うんですか、お客さん。もうこの国じゃ、何も立ち行きゃしませんよ。お客さんは、私がここで、新聞が届けられるのを待っているんだとでも思ってるで?」
店の中を見渡すと新聞がないのが見受けられた。
「配達の奴が、どっかで読みふけってるんじゃないのかい。」と茶化すと、売店の男は、
「いいえ。いつも新聞を運んで来るのはルーマニア人なんでね。イタリアの新聞なんか読まないでしょうね。」と。

そうこうしてる間も、私はずっとオレンジジュースが飲みたかった。
この辺にあるのは、あの一度も足を踏み入れたことがない喫茶店だけだ。いつもモロッコ人達のたまり場になっていて、まさにその連中が市場に店を出しているんだが。あいつら、黒んぼじゃないが撃っても良いものかな。調べてみなけりゃな。
喫茶店には、一体どうしたことなのか、客は誰もいなかった。
店内に入ると、ウェイターが一人、ぼぉーとしていた。オレンジジュースを頼むと、
「売り切れです。」と言う。ここに至って遂に、わたしは諦めることにした。
その後、銃器店に向かう途中、携帯電話が鳴った。女房からだ。
「ペルーはどこへ行ったのかしら?」
「こっちが聞きたいよ。お前、また休みを与えたのかい?」と言うと、
「まさか!」と叫び声をあげ、
「家の中の物、ちゃんと全部あるかしら…。ちょっと見てくるわ。」と。
オレンジがないんだよと言いたかったが、その前に電話を切られてしまった。

そのまま、たて続けにまた電話が鳴った。お袋からだ。ため息が出た。電話に出るか、聞えなかった振りをするか…。いや、出るさ。
「オルガがいないんだよ。」と、耳元でお袋が吠えたてた。
わたしは戸惑った。オルガって…。
「ああ、あの…母さんの所に来た新しいロシア人ヘルパーのことかい?」
「それ以外に誰だって言うんだい?」
「母さん、この半年の間に1ダースものヘルパーをクビにしたじゃないか。」と言っててやると、お袋はチャカチャカと本題にうつった。
「今日、レストランまで連れて行ってもらうことになってたんだよ。すぐに別の人を探しておくれ。じゃなきゃ、お前が連れて行っておくれ。そうすりゃ、お前も母親がいるんだってことを忘れやしないだろ。じゃ、レストランの予約を頼んだよ。あたしゃ、家の中の物がちゃんと揃ってるか見てこなきゃね。」
お袋はこう言うと電話を切った。
わたしは後からゴタゴタ言われるのを避けるため、さっさとお袋お気に入りのレストランに電話を入れた。
「申し訳ありませんが、本日は営業しておりません。」と、レストラン支配人が言う。
「定休日が変わったのかい?」と聞くと、
「いいえ。コックや下働きをしていたアフリカ人達がいなくなってしまったんです。」
「一体、どうして…?」
「姿を消してしまったんですよ。」と言って電話は切れた。

さて、どうしようかと考えていたら、わたしは腹が減ってきた。
偶然にも、すぐそこにパン屋がある。店に入るや店主から、
「本日、パンはございません。」と告げられた。
「えっ!?もう売り切れたのかい?」と訊ねると、店主は、
「いいえ、配達されなかったんですよ。今朝、アラブ人のパン職人達が来なかったんでね。」とブツブツつぶやいた。
わたしは店を出て、ようやく銃器店へとたどり着いたものの、今度は店主が店を閉めようとしていた。私の姿に気づくと、
「いらっしゃいませ。」と、やや呆然とした様子だ。
「黒んぼを撃つのにライフルが欲しいんだが。」と言うと、店主は店のウィンドーを指差した。
「ああ、わかってるよ。じゃ、次に入荷するのはいつなんだい?」と、わたしが微笑んで見せると、店主は首を左右に振った。
「あのですね、昨日の夜、黒人達は全員いなくなってしまったんですよ。だから、ライフルの製造工場も閉鎖されてしまって。つまり、黒人がいなければ、黒人を撃つなんてことは夢物語になってしまうんだって、考えもしなかったわけですよ。」
「はぁ。黒人がいなけりゃ、オレンジジュースを飲むんだって夢物語になるわけだ。」と、わたしは愚痴りながら、
「調べてみなければ。多分、ジプシーだって、ルーマニア人だって、モロッコ人だって撃って良いはずだ。」と言うと、
「知らないんですか?彼らだって、みんな居なくなったんですよ。」と店主。
「残念だな。」と、わたしが言うと、店主も、
「残念ですね。」と。
「良い時代だったよな。黒んぼ達を自由に撃つことができてなぁ。」と、わたしがつぶやくと、
「良い時代でしたよね。」と店主もつぶやき、わたしが、
「でも、連中、戻ってくるかな?」と聞くと、店主は両手を広げて、こう言った。
「どうでしょうかね。撃ってやりましょうよ(Spariamo:スパリアーモ)…いや、違った。戻ってくると良いんですがね(Speriamo:スペリアーモ)。」

無念に思いながら、わたしは家路に着いた。その時、いや〜な予感がしてきた。
わたしは携帯でパンテーラに電話をした。お気に入りのニューハーフなんだ。しかし、おかけになった電話番号は現在使われておりません…と。
「そんな馬鹿な…。」
それで今度は、アリに電話をかけてみた。ドラッグの密売人で、信頼できる男だ。しかし、こちらもつながらない。
その瞬間、わたしは、何年か前に壁に落書きされていた一文の意味を理解した。
《移民達よ、後生だから、わたしをイタリア人の中に置き去りにしないでおくれ。》
(2010年1月14日 La Stampa)

 

 

この主人公が、なぜオレンジジュースにこだわっているのかはですね、
その暴動が起きたロザルノ市で、アフリカ人移民はオレンジ収穫の仕事をしていたんですよ。
それで暴動事件の後、アフリカ人移民らが他の場所に移送されちゃったもんだから、オレンジの収穫ができなくなって困ってる…と言うのが現実の話でして。

 

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2 Responses to もしも外国人がいなくなったらイタリアは…

  1. Sanzone 2010年1月20日 at 12:02 AM #

    ご無沙汰しております。
    遅ればせながら、明けましておめでとうございます(遅過ぎますが・・・失礼!)
    ロザルノの暴動や、ハイチの地震や、
    なんやかんやと新年そうそう相変わらず
    イヤなニュースばかりで臥せって
    おりました・・・

    この話、La Stampaに載ってたんですか?
    面白い(って言っちゃダメだけど)です。
    ほんとだ、移民がいなくなれば
    ピッツァだって食べられなくなるかも
    しれませんよね?!(Pizzaioloもいまや
    エジプト人なんですから)
    ミラノの卸し市場だってフィリピン人と
    バングラディシュ人がほとんどを
    占めているって話だし、郵便物を
    運んでるのは南米からの出稼ぎ者だし、
    地下鉄構内のチケット売り場、
    キオスクは中国人が働きだして
    テキパキするから長蛇の列も解消だし・・
    あ、日本人はいなくなっても困らないか?!
    それも哀しいモンがありますが・・・

    なにはともあれ、今年も
    楽しみにしております。

  2. chirico 2010年1月20日 at 6:14 PM #

    おっ、Sanzoneさん
    あ、あ、明けまして(いいんだ、まだ1月だから、いいんだ)おめでとうございます。
    こちらこそ、今年も、貴重なコメントを楽しみにしていますね。

    そう、面白いですよね(って、やっぱり言っちゃいけないんでしょうかね)。
    本当に『La Stampa』の記事なんですよ。もちろんネット版の方ですが。
    翻訳の最後の方でオリジナルにリンクしてるんで、良かったらそっちも見てください。

    おそらくね、「外国人がいなくなったら」って仮定して、こんな風に色々と困ったシチュエーションを並べ立ててゆくのが、マスコミで流行ってるんじゃないかと思うんですよ。
    14日の夜の『Anno zero』でも似たようなことをやってましたから。
    ただ、そっちの方は、各地方の特質とか数字もちゃんとあげて品よくまとめてましたけどね。
    最後のオチも、
    「サッカー選手も外国人が多いから、サッカーの試合も見られなくなるだろう」って。
    スタジオ内でけっこう受けてましたよ。

    そう言えば、知り合いのイタリア人も、
    「近所で一番美味しいピザ屋はエジプト人がやっていて、その奥さんはナポリターナで、作ってるピザはロマーナだ」なんて言ってましたが。
    日本人がいなくなったら、やっぱり「おいしい寿司が食べられなくなる」ってあたりでしょうかねぇ…。
    だとしたら、そんなにたくさんの人は困らないか…。

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