ヤマハ降参、工員が屋上に立てこもり

最近のイタリアの不況を語るのに、覚えておかなければならない単語と言えば『Cassa integrazioni(カッサ・インテグラツィオーニ:給与補填金庫)』。
イタリアの失業保険制度なんですが、正確には失業保険とはちょっと毛色が違いまして。
企業が操業停止したり操業短縮をした時、その間、仕事がないわけだから企業からはお給料がもらえなかったり、少なくなったりする職員の所得を、INPS(全国社会保障機構)が保障してくれると言ったシステムなんです。
さて、イタリアのヤマハ工場で働く工員さん達が、いきなりの解雇通告を拒否し、このCassa integrazioniでの所得を手に入れるため、超々寒空の下で一週間も体を張り続けたんですよ。

 

 

ミラノ 『レズモ市ヤマハ工場、合意に達し工員ら屋上ストライキ終了』

降りてこられるんですか?
「ええ。ちょうど今、降りるところです。消防のはしご車が来ていて。階段が凍りついているんで、降ろしてもらうんですよ。いや〜、終った、終った。」
昨夜、午前3時15分、電話口に出たのはエマヌエーレ・コロンボさん。ヤマハ伊工場に務める工員4名のうちの1人だ。電話の向こうからは話し声と雨音が聞える。それから、「オーレ!」と叫ぶ声。それとも、そんな風に聞えただけなのか。
工場の中では『テネレ』と名付けられたバイクの組み立て作業が行われている。『テネレ』はアフリカのトゥアレグ族のあいだで『砂漠』を意味する語だ。
3階の最上階にはイタリアヤマハの村田拓(ひろむ)社長のオフィスがある。従業員代表が解雇についての説明を受けるためにこのオフィスを訪れた時、村田社長は申し訳ないと言って涙を流したと言う。その村田社長も1週間前から姿を見せない。

1週間前(正確には12月16日)から工場の屋上には、テント1組と4つの寝袋が置かれている。この寝袋を使っていたのは、パオロ・マペッリさん(39才)、エマヌエーレ・コロンボさん(31才)、マルティーノ・サンヴィートさん(27才)、そしてジャルノ・コロジオさん(21才)ら工員4名。
ジャルノさんは首にサッカーチーム『ミラン』のマフラーを巻いているのだが、ヤマハ工場の柵の外側に張られたテント陣営では、アンジェロ・カプロッティさん(51才)がこんな風に話してくれた。
「あのマフラー、俺がジャルノに巻いてやったんだよ。俺の息子と同い年でね。息子の方は数ヶ月前に亡くなったんだが。」
ヤマハの同工場はレズモ市の郊外ジェルノに置かれており、ミラノ市からは40km、アルコレ市からだと4kmの位置にある。
頓挫したかに思われていた状況は好転し、すべては夜間に終焉を迎えた。給与補填金庫(cassa integrazione)で従業員の収入が補償されることになったのだ。
すべては1週間前、ヤマハ側が組立て部門をスペイン工場の方に移し、現在、イタリア工場で働く工員66名の解雇を発表した時から始まった。

ろう城支援のためのテント陣営にはトレーラーハウスが置かれ、ドラム缶で火が焚かれ続けた。
解雇の対象とされた66名の中の唯一の外国人、ペルー出身のルビオさんがバーベキューの支度に奮闘し、地元の政治家が様子をうかがいに来ることもあった。
エマヌエーレ・コロンボさんは2001年にヤマハに入社し、その年に婚約した。しかし2009年には、
「彼女とは別れました。そして、仕事はクビになりそうなんです。ひどい年ですよ。いや、もしかしたら、そうじゃないのかな。僕達は根性を見せてるんです。ヤマハで働く僕達は、いつだって誇らしかった。友達にも自慢できたものです。現在のような状態にはなりたくなかったんですよ。仕方がなかったんです。給与補填金庫(cassa integrazione)で補償してもらうには、こんな大げさなことをするしかなかったんです。」
屋上でのテント生活では熱は出るし、咳は出るし、気管支炎は患うし。口にしたのはピザや野菜スープ。そして楽しみと言えば、グラッパ一瓶にトランプだった。
これらはすべてヒモに括られたカゴに入れられ、上へ下へと運ばれたのである。地上から10mぐらいの高さでは、カゴはヤマハ社員らの目の前を行き来したものだ(従業員削減の対象は工員のみ)。ある社員などはろう城を見学に来る人々が難儀な思いをしないようにと、テント陣営から工場まで200mの距離の雪かきを良くしていた。

監視カメラを背に通用口を守る警備員らは、職員や顧客、そして、ろう城している4名に食料を届けに来た工員だけを敷地内に通し入れているのだが、時々、経営陣の顔色をうかがって職務に励みすぎると非難されることもあった。
ある警備員が、泣かんばかりに話してくれたことがある。
「工員達の気持ちは良くわかる。だけど私は以前、別の職場でね、出社したら門が閉まっていて、事前に通達もされずに解雇されたことがあるんですよ。ヤマハでこの仕事につけたんだから、ここで私はずっとずっと働き続けたいんです。」
ローマでは今日、ヤマハの首脳陣らがサッコーニ労働大臣と面談をし、給与補填金庫(cassa integrazione)が承認されるのに夜までかかった。
同面談にはヤマハの経営陣、そして、イタリア労働者組合総同盟から温和で粘り強いジジ・レダエッリ氏を筆頭に組合員らが参加し、ヤマハの工員らには1,200ユーロ(約15万6千円)が補償されることとなった。
ジェルノのヤマハ工場には、モトGPのヴァレンティーノ・ロッシ選手のチームによる走行部門もおかれている。
先のアンジェロ・カプロッティさんは、
「ロッシ選手には我々から手紙を出したんですが、返事はありませんね。」と話す。ちなみに、アンジェロさんの奥さんもまた、解雇の対象とされた66名の工員の1人なのだ。
屋上に立てこもっていたジャルノ・コロジオさんは、暇な時にはバイクを走らせていると言う。マルティーノ・サンヴィートさんの方は、サッカーのセリエC1でディフェンスとしてプレイ。パオロ・マペッリさんはペットの蛇達と過ごし、エマヌエーレ・コロンボさんは山登りを楽しむ。頂上に向かって挑んでゆくのが好きなのだと。
(2009年12月23日 Corriere della Sera)

 

 

ここ2〜3日のイタリアは例年にない大寒波に見舞われまして、私もイタリアに来てから1番寒いと嘆いてたんですが、却って、それがヤマハ経営陣の心を動かしたんでしょうかね。
ちなみに、ヤマハ工員さん達が手紙を出したんだけど返事はなかったと言うヴァレンティーノ・ロッシ選手…。
つい最近はフォーブス誌の高額所得者番付『スポーツ選手編』で、堂々の第4位に入ってました。
1位タイガー・ウッズ、2位がベッカム、3位がフィル・ミケルソンときて、しかもイタリア人としても唯一のランクインと言う快挙なんですよ。
まぁ、けっこうCMなんかもやってるからヤマハからの収入だけじゃないとは言え…タイミング悪かったですね。

あっ、それから話は変わりますが。
え〜、一応、イタリアでは12/24〜1/6までクリスマス休暇となってますんで、当ブログの更新の方も通常よりは不定期なものになるかと…いや、できるだけ頑張りたいとは思ってるんですが。
更新されない時は、過去記事なんぞを読んでいただければ光栄至極であります。 
それでは皆様も、良いクリスマス&年始年末休暇を。

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2 Responses to ヤマハ降参、工員が屋上に立てこもり

  1. Sanzone 2009年12月24日 at 7:44 PM #

    このヤマハ問題、感動しました。
    ミラノのここ数日の雪、本当にスゴかったんですよ。寒いっていうより「冷たい」・・・
    そんな中、この立てこもり。
    この近くに行った事がありますが、大きな垂れ幕が何枚もかかってて、「皆、必死なんだなぁ」と、そして「明日は我が身だ〜」と
    思ってました。

    今後も問題が山積みでしょうが、
    イタリア人労働者の「粘り」というか、
    「闘う姿勢」みたいなもの、それって
    今の日本に欠如してる感じがします。
    デモ行進ばっかりやってるのも、どうなの?と
    思う時もあるけど、やっぱり「理不尽」な事には、これぐらいの気迫が必要かも?!

    今年も楽しい話題をありがとうございました。
    Natale休暇中に、読みこぼしてる記事を
    読んで、来年も楽しみにしてます。

    Buon Natale e Felice Anno Nuovo 2010.

  2. chirico 2009年12月25日 at 4:37 AM #

    おっ、Sanzoneさん、こんばんは。

    常々、私も色んなデモ行進の模様をニュースで見る度に、一部の参加者は遠足気分なんじゃ…って思ってたんですが、今回のは気温が気温だっただけにスゴかったですね。
    イタリア人、やる時はやるぞ!って感じで。

    でも4人の工員さん達、屋上から降りた途端に気温が上がってしまって。
    現在、私が住んでいる中部地方でも夜8時で18度。戸外の方が暖かいぐらいなんですよ。
    でも却って、あの雪と寒さが経営陣の気持ちを動かしたんだとしたら、やっぱり意義ある極寒生活ってことか。

    それから急に改まりまして、Sanzoneさん
    今年は色々と貴重なコメントを本当に有難うございました。

    当ブログは内容もマニアックなうえに、お世辞にもフレンドリーな空気は漂っていないもんですから、コメントしてくれる方が少なくって寂しい思いをしてたんですよ。

    今年は、あと、なんとか例のアルド・モーロ記事を完結させたいと思ってますんで、もうちょっとヨロシクお願いします。
    あっ、もちろん、来年も。

    それでは、 Tanti auguri anche a te.

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