マフィアが元首相を救出!?:赤い旅団モーロ誘拐事件とンドランゲタ【第3章】

1970年代末、左翼テロリストの『ブリガーテ・ロッセ(赤い旅団)』によって誘拐されたアルド・モーロ元首相。
ここに至って、そのモーロ元首相を救出すべくンドランゲタ(カラブリアマフィア)が奔走していた…と言う供述が出てきております。
全4回シリーズでお届けしてます同記事も、やっと佳境に入ってきました。
初めての方は、まず【第1章】【第2章】の方から、どうぞ。

 

 

イタリア 『俺はモーロ元首相を救出しようとしたんだ』

この時点で俺は、あのマリアーナ組織から得た手がかりは、あながちありえないことでもないのだと理解した。
と言うわけで再び俺はピーノ諜報部員にコンタクトを取り、俺の方ではまだ何も分かってはいないと信じ込ませ、再度手を貸してくれるよう頼み込んだ。奴と俺の間柄じゃ嫌とは言えない。奴は警察をまくために何かと手を尽くしているのだと言い、それから俺に警察官のダミアーノ・バレストラに会うよう勧めてきた。
Sismi(イタリア共和国諜報機関)のステファノ・ジョヴァンノーネ大佐の指揮の下、ベイルートの大使館に所属し伍長を務めている男で、ジョヴァンノーネ大佐から全力をあげてモーロ元首相を救出するよう命じられているのだ。
(編集部注:モーロ元首相は監禁中に手紙で、救出作戦の指揮はジョヴァンノーネ大佐が取ってくれるよう嘆願している)
「バレストラ伍長は最高の情報源だ。」と、ピーノ諜報部員は言う。
誇張ではない。3月末日に、ローマはアルベローネ地区のトゥースコラーナ通りにある喫茶店の前で、我々3人(俺とピーノ、バレストラ伍長)が顔を合わせた時に、それを再認識することとなった。
午後、我々はピーノ諜報部員の自家用車ランチアの中で話をした。バレストラ伍長の言葉は要領を得ていた。
「モーロ元首相の救出のために私は命を張って動いてるんだが、なかなか壁は大きくてね。信頼できる情報が入ってきても、それは同時にガセネタでもある。もはや敵か味方かたの区別さえつかないんだ。それに加えて警察内での軋轢もあるからね。社会主義の連中はモーロ元首相の無事を願っているが、キリスト教民主主義の大半は助けたい振りをしてるだけなんだよ。」
それからバレストラ伍長は小声でこう言った。
「噂の隠れ家、例のグラドーリ通り96番地のマンションなんだが、あそこには誰も住んでいない。少なくとも、調べに行った者の話じゃ、そう言うことだ。(編集部注:同マンションへの初回捜査は3月18日に行われた。家宅捜査は建物内の全戸に行われたが、『赤い旅団』が借り上げていた部屋だけはベルを鳴らしても応答がなかったと言う理由で除かれている。)」
しかしバレストラ伍長は、たとえ誰も住んでいなくても、『赤い旅団』のメンバーがそこに入り浸っていることは確かなのだと言い張った。

ここに至って俺は、ローマまで出向いてきたことが徒労に終る危険性を感じていた。
モーロ誘拐事件は新聞各紙の第一面に載り続け、各政党はその衝撃を世間にさらしてはいるが、舞台裏は公表できない何かに蝕まれている。
『赤い旅団』の隠れ家を探し出そうと全力を尽くして奔走する者は、支援など得られないのだ。
例えば、シチリアのファンファーニ派のキリスト民主主義党員で、国会議員を務めるベニート・カツォーラ氏(編集部注:1999年に行方不明)のように、モーロ救出の手がかりを得るためならば誰にでも会いに行くような真摯な人物でさえ支援されはしない。
カツォーラ議員はンドランゲタ(カラブリアマフィア)のメンバーであるサルヴァトーレ・ヴァローネとも会っている。俺達の間ではトゥーリの愛称で呼ばれている奴で、ンドランゲタのボスの息子ロッコ・セルジの名をかたりカツォーラ議員と何度も会っているのだ。その詳細について俺は聞かされていないが。

俺の方はと言えば、あのチャンピーノ市の家具屋モラビートの仲介でカツォーラ議員とコンタクトを取っていた。モラビートによると、カツォーラ議員は「気違いみたいになってモーロ元首相の情報を集めている」とのことだった。
カツォーラ議員とはローマのレストラン『ルーペ・カルプールニア』で落ち合うことにした。ンドランゲタのメンバーが、あのロッコ・セルジの誕生日を祝った店だ。
カツォーラ議員との会話は短く緊迫したものだった。ンドランゲタのメンバーであるモラビートやラウレンディらが立合いのもとで話され、カツォーラ議員は苦渋に満ち満ちていた。
すでに俺達以外のンドランゲタとも会ったことを説明し、例えばロッコ・セルジはほらを吹くだけでどうにもならなかったと言った。
「ロッコは、カラブリアの同胞はローマに40万人いるのだから、情報収集は可能だと強く言っていました。そのうえ、なわばりを統括することだってできるのだと。」
俺は内心、奇妙な話だと思った。カツォーラ議員がロッコだと思い込んでいるそのサルヴァトーレ・ヴァローネって言うのは、ンドランゲタの中でも『NO』と言えることに重きをおいているような男なのだ。
しかし俺は、ヴァローネのところに誰が出入りしているのかは知らないわけだから、黙ってカツォーラ議員の話を聞き、こう言うだけにとどめた。今のところ自分は確かな情報はつかんでいないが、政界筋から頼まれて『赤い旅団』の隠れ家を突きとめるために動いているのだと。

それに対してカツォーラ議員は、
「君達が私よりも運に恵まれるよう心から願っている。君達の友情に感謝しているよ。」と答えた。
こうして時間は過ぎてゆき、事態はいよいよ劇的なものへとなっていった。
3月29日、『赤い旅団』から3回目の声明が届けられ、それにはアルド・モーロ元首相からコッシーガ内務大臣に宛てられた
手紙が添えられていた。
4月4日の4回目の声明では、モーロ元首相からキリスト民主主義党のザッカニーニ党首に向けて苦渋に満ちた手紙が届けられた。
(編集部注:解放に向けての交渉についてモーロ元首相は以下のように書いている。
“抵抗すると言うのは、より適ったことのように見えるが、譲歩すると言うのは公正なだけでなく、政治的な観点からも有用なものである。私が喚起するように、多くの国家がそのような社会的、政治的な方策をとっているのだ。
そのように行動する勇気が他の誰になくとも、キリスト民主主義党はそのように行動したまえ。より困難な事態に対応できる感知力を有しているのだから。
もし仮に、そうではないと言うのならば、遺恨なく言わせてもらうが、同党では党および党員に対し、避けがたき結末を望んでいると言うことになるのであろう。”)
− 最終章に続く −
(2009年9月22日 La Repubblica/L’espresso)

 

 

さて、いよいよ残すところ最終章のみとなりました。年内に終了させたいと言う野望も、さすがに果たせそうでやれやれ…おっと、油断は禁物。
これまで心の片隅で応援し続けてくださった皆様、ありがとうございます。
今しばらく、そのまま、そのまま。

 

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