マフィアが元首相を救出!?:赤い旅団モーロ誘拐事件とンドランゲタ【第2章】

1970年代末に起きたアルド・モーロ元首相の誘拐および殺人事件。
犯人は左翼テロリストの『ブリガーテ・ロッセ(赤い旅団)』と言われてますが、実は、背後に有力政治家がついていたんじゃないか…などなど、いまだに多くの謎が語られている事件であります。
…と言うわけで、先週、掲載した【第1章】の続きです。どうぞ。

 

 

イタリア 『俺はモーロ元首相を救出しようとしたんだ』

3月22日午前、フランチェスコ・コッシーガ内務大臣率いる作戦委員会が内務省のあるヴィミナーレ宮に集結する一方で、俺は約束の時間通りに出向いていた。
カフェ・デ・パリスのテラス席に座り、10分程待つとザッカニーニ党首が現れた。周囲を見回し、俺を見つけ出すと目の前の席に腰をおろした。すぐに俺を見つけられるよう何か特徴でも聞いてきたのだろうと思ったのだが、そう言うわけではないようだった。
「政界における分別ってものにとっては、良い時期とは言えないようだね。」
ザッカニーニ党首は挨拶もせずに話し始めた。落ち着かず、苛ついている様子なのが見てとれた。まぁ、俺みたいな者に会わなければならないわけだからね。
ザッカニーニ党首は言葉を続けた。
「本当にね。こんな女々しく頼み事をするために貴方のような方に会う日が来るとは、夢にも思いませんでしたよ。体面を汚すようなことはしたことがないんだがね。こうして貴方に会ってるわけだから、物事の仕組みが変わってきたってことなんでしょう。今日のことが無駄にならないようお願いしますよ。まったくもって決定的な岐路に立たされているわけだ。我々に手を貸していただけますか。キリスト教民主主義党が、このご恩に報いることは私が保証します。」
そして、水を一口すすると立ち上がり、
「それでは、私達は会ったことなどないと言うことで…。もし私に直接連絡を取りたい時は、ピーノ諜報部員に言ってください。」と言った。

ザッカニーニ党首の冷ややかな態度に、俺もよそよそしく言葉を返した。有力情報を集めるべく動いていることだけ告げ、それからこう付け加えたんだ。
「我々の調査が有用なものとなることは確かですし、それに関する連絡は私が直接行います。」
俺はしっかりと確信を持ってこう言った。ベニーノ・ザッカニーニ党首と会うのは、これが最初で最後になるのかは分からなかったし、ましてやこれから、俺の身にどれほど意外なことが起こるかなどは知る由もなかったのだから。

まず俺はローマのヤクザ者で、モンゴルひげをたくわえていることから『中国人』の異名を持つ男と会うことにした。
奴の本名は知らないが、ローマじゃその名が知れた犯罪組織マリアーナに加わっていることは確かだった。
コーザ・ノストラ(シチリアマフィア)でローマのショバを仕切っているピッポ・カローって奴から聞いた話だが、その『中国人』は俺の役に立つだろうって太鼓判を押していた。
カローは、
「マリアーナ組織の連中は全部知ってるから。」と言い、現在、コーザ・ノストラの方でもローマ警察に協力してアルド・モーロの誘拐犯特定のために動いているのだと話していた。
「警察が約束なんか守りゃあしないってことは分かってんだが、無期懲役でムショに入ってる仲間の釈放のためにね、手を貸さなきゃならんってわけさ。」

ローマの極道連中と関わるにあたって俺はかなり迷っていた。と言うのも、カラブリアの方じゃ良くこう言うからだ。ローマの連中と一緒に飲み食いはしてもいいが、仕事は駄目だって。口が軽すぎるのさ。自慢話をしては、やっかいごとを背負い込む。
そんなわけだから、ブルーナ・Pの手引きで『中国人』と会った時、俺はえらく慎重にしていた。
ブルーナ・Pって言うのは俺の女で、下着屋をやっているんだが、そこの店でマリアーナ組織の資金洗浄が行われているんだ。
『中国人』と会ったのは3月25日、赤い旅団が二度目の声明を出してきた日だった。
メルーラナ通りの、サン・ジョヴァンニ広場から程近いビヤホールで俺達は落ち合った。奴はいち早くはったりをかけてきて、
「赤い旅団のマリオ・モレッティやら他の連中やらが、どこに隠れてるかなんてみんな知ってることさ。」と笑った。
1リットルのビールジョッキを握りしめ、デリケートな話題にもかかわらず、込みあった店内で大声で話し続けた。
「モーロの誘拐犯らはグラドーリ通りのマンションにこもってる。カッシア大通り寄りの方だ。」
マンションの正確な番地は言わなかったが、とにかく自信はあるようだった。
「モーロのことを探し出すなんてのは、おやすい御用さ。だけど、奴のことを一体どこのどいつが探し出したいなんて言うんだい?」と言うと、また大笑いをしてみせた。

俺が途方に暮れたのは言うまでもない。
ある面では愉快だったよ。『中国人』の様子がね。だが、別な面を言うならば、俺は時間の無駄になるんじゃないかと危惧していた。
だいたい、どうしたらローマの極道連中が皆、どこに赤い旅団の隠れ家があるかを知ってるって言うんだ。ザッカニーニ党首に連絡を取る前に、もっと確かな筋にあたる必要があった。
そんなわけで、俺はアンジェロ・ラウレンディと会うことにした。カラブリア南西部サンテウフェーミア・ダスプロモンテ市のンドランゲタの一員で、ずいぶん前からの知り合いだ。俺は奴から有力な情報が得られないかと期待した。言われのない期待と言えばそれまでだが、だからと言って奴と会うのが無駄だってことにはならない。
俺は奴のランチア アッピアに乗せられて、チャンピーノ市に連れて行かれた。正確に言うなら、チャンピーノ市にある家具店にで、そこの店主はレッジョ・カラブリア出身のモラビートって言う男だった。本名は知らないが、ンドランゲタの一員だ。四十の坂をけっこう越えたずんぐりした男で、黒いひげをたくわえ、頬骨のあたりに小さな傷跡があった。
俺は店の事務室に丁重に迎え入れられた。グラドーリ通りにある赤い旅団のマンションについて訊くと、モラビートは、
「グラドーリ通りに何かがあることは確かですよ。」とうなずき、
「私が聞いた話では、赤い旅団はマンションを一軒持っていて、おそらく、そのマンションとアルド・モーロには何か関わりがありますね。」と言った。
− 第3章に続く −
(2009年9月22日 La Repubblica/L’espresso)

 

 

全4回での掲載を予定している同記事ですが、なんとか年内に終了させたいと…今年最後の目標にかかげております。
続きが読みたい方は、どうぞ、そのまま心の片隅で応援し続けてください。

 

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2 Responses to マフィアが元首相を救出!?:赤い旅団モーロ誘拐事件とンドランゲタ【第2章】

  1. 台湾人 2011年1月11日 at 11:12 AM #

    イタリアの極左テロ組織の「赤い旅団」ですか。フランスのサルコジ大統領の奥様のカーラ・ブルーニはイタリアのトリノ出身の富豪の娘で幼い頃は「赤い旅団」の誘拐のターゲットになるのを恐れて一家フランスへ移住したそうです。

    • chirico 2011年1月12日 at 8:35 AM #

      台湾人さん、コメントありがとうございます!
      カーラ・ブルーニ…そうらしいですよね〜。誘拐を恐れて移住して、その後は、伊首相を嫌ってフランス人になって良かったって言ってるぐらいだから、もう、イタリアなんか心底嫌いかもしれませんねぇ…。

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