マフィアが元首相を救出!?:赤い旅団モーロ誘拐事件とンドランゲタ【第1章】

イタリア近代史のなかで繰返し語られる大事件の一つに、アルド・モーロ元首相の誘拐事件と言うのがあります。
1978年3月、左翼テロリスト集団『赤い旅団』に誘拐されたモーロ元首相は、当時のジュリオ・アンドレオッティ首相が『赤い旅団』からの釈放要求をのまなかったために殺害されたと言われているのですが。
さて、イタリアでは再三ドラマや映画などで取扱われるその事件に、あまりに意外な裏話が出てきてしまいました。

 

 

イタリア 『俺はモーロ元首相を救出しようとしたんだ』

ンドランゲタ(カラブリアマフィア)から寝返り、司法協力者となったフランチェスコ・フォンティが、いかにして誘拐されていたアルド・モーロ元首相(写真上:車内の遺体)を救出しようとしたのか。
そして、背後にあるキリスト教民主党からの要請。
イタリア諜報機関からローマの犯罪組織マリアーナ、シチリアマフィアのコーザ・ノストラ、果てはキリスト教民主党のベニーノ・ザッカニーニ党首にまで接近したにもかかわらず、任務が果たされなかったのはなぜなのか…。

フランチェスコ・フォンティ。今週、新聞やTVニュースをにぎわした名前だ。
2005年に当誌で掲載した記事が資料としてマフィア対策本部に受理され、今年の9月12日、イタリア南西部コゼンツァ県パオラ市およびカラブリア県検察の検事らにより、コゼンツァ海岸沿いに廃棄物を積載した貨物船が沈んでいることが割り出された。
つまり、有毒および放射性廃棄物の国際的な流通経路を暴くための、最初の一歩が踏み出されたのである。
政治と秘密諜報機関、犯罪組織からなる三つ巴(みつどもえ)の事業。
フランチェスコ・フォンティは、
「重大な事業だが、これは自分が携わっているもののほんの一部に過ぎない」と言う。
フォンティはンドランゲタ(カラブリアマフィア)から寝返り、司法協力を始める以前に懲役50年の判決を受けている。そして、現在のような微妙な時期に、その犯罪人生において遭遇したある逸話を当誌に明かしてきた。
その逸話と言うのは、元首相でありキリスト教民主主義党の元党首、故アルド・モーロ氏を救出すべき役どころを担ったと言うのものなのだ。
1978年3月16日、モーロ元首相は赤い旅団によって誘拐され、5月9日にローマで遺体が発見された。
フォンティは、このモーロ元首相の救出任務をマフィアボスのセバスティアーノ・ロメオから命じられ、そして、その背後にはキリスト教民主主義党からの要請があったと言うのだ。
3週間に渡ったこの劇的なストーリーを、フォンティは次のように語っている。

《1978年3月20日午前、レッジョ・カラブリア県のジョニカ海岸沿いにあるボヴァリーノの町、そこの俺のアパートにジュゼッペ・ロメオが現れた。
ジュゼッペはボス・セバスティアーノの弟で、その当時、サンルーカ・ファミリーの幹部をしていた。そのジュゼッペが、
“大至急、兄貴がおまえに会いたがっている。”と言う。
問答無用だ。
セバスティアーノはただのボスじゃない。ンドランゲタ(カラブリアマフィア)の中でも一、二を争う権力を持っている。
俺はなにも訊かずに従い、すぐに、ボスの部屋にある楕円形のテーブルの前に座ることとなった。
一体、なにごとだろうと心配する俺に、ボス・セバスティアーノは一秒の猶予も与えずに切り出してきた。
“おいデブ公、あのアルド・モーロのおっかねぇ事件、知ってるかい?
あれな、ウチでひと仕事しなくちゃならなくなったんだ。おまえ、ひとっ走りローマまで行ってこい。むこうにいる仲間やら顔見知りの諜報の糞ったれ野郎共から聞き出して、赤い旅団の連中がどこにモーロを連れ込んだのか調べてくるんだ。”

俺は口をはさむ間もなかった。
モーロ事件は国家レベルでの警鐘を引き起し、我々組織の事業に支障をきたすような悪評がピリピリと漂っていた。
“二ヶ所から圧力をかけられている。リッカルド・ミザージとヴィート・ナポリ(編集部注:カラブリア地方におけるキリスト民主主義党の主要人物)、それから、ローマの某人物らからも連絡があってね。”
その某人物とやらが誰なのかをボスは言わなかった。しかし、これは極めて重要な任務であり、失敗は許されないだろうと声を高めた。

こうして翌日、俺はローマへと向かった。
メタルグレーの愛車ルノー5アルピーヌから降り、以前にも泊まったことのあるナツィオナーレ通りのパラス・ホテルに荷物を降ろす。
ここでは、ミケーレ・シターなる架空の人物宛ての偽造書類の受渡しをすることになっている。
それからピーノと呼ばれているSismi(イタリア共和国諜報機関)のエージェントとコンタクトをとるのだ。30歳前後、身長は180センチほど、スポーツマンタイプで、短髪をオールバックに撫でつけている大男だ。
数年前にグイド・ジャンネッティーニを通じて知り合ったのだが、俺のことをおだて上げ、ンドランゲタ内部のヒエラルキーについて探ろうとしてきた奴だ。
ピーノとは信頼できる関係にあったんで、俺はモーロ事件担当の警察連中が何を知っているのかを訊いてみた。赤い旅団がどこにモーロを連れ込んだのかを警察では突き止めてるのかってね。
奴はあいまいにかわしてきたよ。全く馬鹿げた話だとか、一体、どんな風になってるのか見当もつかないなんて言ってね。代わり奴は俺に、キリスト教民主主義党のベニーノ・ザッカニーニ党首(写真左上)がモーロ救出のために手がかりを追っているから、話をしてみたらどうかと言ってきた。
そして、その後すぐに、この『話をしてみたら』と言うのが現実になったんだ。

モーロ元首相が乗っていたFiat 130が調べられ、初回の強制捜査の調書に掲載されていなかった第三のかばんが発見されたと言う激動的な一日の終わりに、俺はまたピーノに会った。
あれからピーノはザッカニーニ党首と話をしたらしく、俺に、
「明朝10時、ヴェネト通りのカフェ・デ・パリスに来てくれ」と言う。そのうえ、『Gazzetta del sud』紙を一部渡しながら、
「これを手に持っているように。そうすれば、すぐにザッカニーニ党首の方で気づくはずだ。」と言った。》
− 第2章に続く −
(2009年9月22日 La Repubblica/L’espresso)

 

 

同記事については、以前からコメント内などで『マフィア関連の長編記事』と言うことで掲載を予告していたのですが、日々の記事に追われてしまってついつい後回しになっていました。
一応、4回シリーズと言うことで週1回ぐらいの掲載を予定してます。
なんとか年内で終らせたいとは思っているのですが…。
続きが読みたい方は、心の片隅で応援してください。

 

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