マフィアは地震の後にやって来る、ゴモラのサヴィアーノが語る【前編】

4月6日に起きたイタリア中部地震では、現役の映画監督らが被災地へとおもむき、速攻でドキュメンタリー・ビデオなどを公表しております。
そして、マフィア映画『ゴモラ』の原作『死都ゴモラ』の作者ロベルト・サヴィアーノ氏もまた現地へと足を運び、独自の視点からラクイラの町を襲うであろう今後の危機について語っております。
前後編2回に分けてご紹介しますので、どうぞお付き合いください。
 

 

ラクイラ『地震からの再建、マフィアによる危機』ロベルト・サヴィアーノ

「儲け話なんかにさせる訳にいかないんだ。そう書いてくれ。ここをセメントだらけにさせる訳にはいかないって。自分らの土地は自分らで再建するさ…。」
口々にこう言われたのは、ラグビー場でだった。鼻先が近づくほどに、にじり寄られ、顔に息がかかった。ある男性はこう言うと、私を強く抱きしめた。それから、ここに来てくれて有難うと。
しかし、彼の恐怖は地震と共に静まったわけではないのだ。

地震が招く厄災とは、大地が揺さぶられている間にだけ訪れるのではなく、地震の後からもやって来る。
郊外住宅の解体、各地区の再建、宿泊施設の修復へと寄せられる資金は、傷を癒すだけのものではなく、魂をむしばむ危険をもはらんでいるのだ。
アブルッツォ地方の人々が恐れているのは、復興と言う名のもと、援助の名目で際限のない投機が広まることなのである。

アブルッツォを訪れた私は、この土地出身の哲学者ベネデット・クローチェ(1866〜1952年)のことを思い出していた。ラクイラ県ペスカッセーロリ市で生まれたクローチェは、地震で家族全員を失っている。
《私と母、姉は夕餉の食卓を囲み、父が席につこうとしているところだった。一瞬、フワリと軽くなった感じで、父がよろめき、床にパックリと開いた穴に、あっという間にすべり落ちて行き、姉が天井高く投げ飛ばされるのが見えた。恐れおののきながら目で母を探すと、私を追うようにバルコニーへと落ちて来て、そして私は意識を失った。》
クローチェは首まですっぽり瓦礫に埋まっていた。父親は息を引き取るまで、何時間もの間、クローチェに話しかけた。父親が何度も何度もくり返していた言葉はただ一つだったと語られている。
「お前を助けてくれた人には、10万リラを差し上げるんだぞ。」と。

アブルッツォの人々を救うために行われた絶え間ない作業は、怠惰とか、他人の痛みへの無関心など、イタリア人の国民性とされるあらゆる面を打ち消すものである。
しかし、この土地のために支払われる金額は、ベネデット・クローチェの貧しき父親が提示した10万リラを遥かに上回る巨額な数字となるだろう。
ナポリ近郊アッヴェリーノ県で30年近く前に地震が起きた際の恐怖と言えば、濫費に汚職、政治的な独占に復興事業による犯罪だった。
セメントとは何かを、開発のためではなく緊急事態のために寄せられた資金が何をもたらすのかを知っている者にとって、その苦悩が和らぐことはない。人々にとっての惨劇が、どこかの誰かにとっては絶好のチャンスへと変わるのだ。尽きることない宝の山へ、利益の楽園へと。
プランナーや測量技師、設計士らは、一見、非の打ち所のない潔白なルートでアブルッツォへと侵攻せんばかりであるが、まさにそこからセメントによる侵略が始まるのだ。
家々が被った被害情報カード。
これからアブルッツォにある主要都市すべてで、市町村立の技術専門家らの事務所にこのカードが配られる。このカードを手に入れた者は、実入りの良い業務を、信じがたいシステムのもとで供給されてゆく仕事を確実に担うこととなる。

「実際のところ、被害が大きくなればなるほど稼げるわけだよ。」と、アントネッロ・カポラーレ氏は言う。
私は彼と連れ立ってアブルッツォを訪れており、例のアッヴェリーノ県での地震を経験したジャーナリストである。そして、地震被害を受けた人間の怒りと言うものは、そう容易に収まるものではない。
アブルッツォを待ち受ける危機を理解するには、29年前のエーボリ市近くの土地で起きた地震をひも解けば良い。アウレッタ市のカルミーネ・ココッツァ副市長が次のように話している。
「この町では、いまだに地震被害からの再興事業に費用をあてています。一般的な技術料としての国からの拠出金10万ユーロ(約1千3百万円)のうち、2万5千ユーロ(約3百25万円)を使っているのです。」
アウレッタ市のために国は今年も、地震被害区域の工事完了に総額8千万ユーロ(約104億円)を割り当てている。
「私達の町は250万ユーロ(約3億2千5百万円)を受け取りました。最後の住宅建設と、その他必要事項に使われる予定です。」
地震から29年が過ぎてもなお再建のための資金が寄せられ、なおかつ専門技術者らがそれを当てにしていると言う事実は想像しがたい。拠出金の25%である。専門家らの見積もりによって予算が決められ、当然、すべて法規にもとづいている。
設計料、作業管理、安全経費、検査官らへの費用。どんどん膨らむ経費。おびただしい検査。専門家が必要を申し立て、承認する。市町村の役場は、ただ請求書の支払いに備えるだけである。

復興にともなう危機とは、まさしくここにあるのだ。被害評価が高まれば、金が増える。
請負契約が生み出すものは土木建設事業やその下請け業務であり、建設作業はイタリアの下請け建設業の先鋒、つまりマフィア・ファミリーを引き寄せる。ナポリのカモッラ、シチリアのコーザ・ノストラ、カラブリアのンドランゲタは、常にこの土地にいたのだ。
それは、アブルッツォ地方の刑務所にカモッラ企業家の大物が収監されているからと言うだけの理由ではない。危機とは、不況において国内の大事業を分け合おうとマフィア組織が到来する…まさにこの事なのだ。
例えをあげるなら、ンドランゲタにとってのミラノExpo然り、カモッラにとってのアブルッツォの復興下請け事業然り。

唯一の対抗策は、復興事業を監視しえる委員会を組織することである。ステファニア・ペッツォパーネ知事とラクイラ市長マッシモ・チアレンテ氏らの意思は明白だ。
「我々は監視される事を希望しています。監視委員会が必要なのです…。」
この土地は犯罪の魔の手が忍び寄ってくる危機にさらされている。何年も前からカモッラ・ファミリーは建設、投資を手がけているのだ。
運命の奇妙なパラドックスは、今回の地震に持ちこたえ、最も被害の少なかった建物がラクイラ刑務所だったと言うことだ。ここには土木建築業界に投資していたマフィア・ボスの大半、80名が収監されている。[後編に続く]
(2009年4月14日 La Repubblica)

 

 

ちなみに、このサヴィアーノ氏、現在はマフィア組織から命を狙われており、住まいを転々としながらボディガード付きの生活を送っております。
今回の取材なんか、さぞや大変だったことでしょう…。

 

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