マフィアを告発し村八分、すべてを失った女性が語る

イタリアでマフィアの逮捕が難しいのは、とにかくみんな口が堅いからだと聞きます。
やっかいなのはマフィアの仲間うちだけじゃなく、近隣に住むカタギの皆さんまでもが報復を恐れて口をつぐむらしいのですが、勇気を出して告発しようものなら、やっぱり……と言う記事が出てきました。

カゼルタ 『ボス達を告発し、私は仕事も友人も失いました』

「銃声が5発、まるで自分の頭の中で炸裂したみたいでした。1発目を聞いて振り返ると目に入ってきたのは、火を吹いている拳銃と、それを手にしている青年の顔、それからもう1人、別の人影。『やったか?』って1人が聞くと、『ああ、大丈夫だ。逃げろ、逃げろ。』って。」
エンジンを吹かす音が聞こえ、TMAXのスクーターが走り去って行く。あとに残されたのは地面に倒れる中年の男性。血だらけで、顔は恐怖で引きつっていた。
マフィアが横行する土地では、この手の話は忘れ去られるものである。だが、カルメリーナさんは、この夜の出来事のひとつひとつを忘れられずにいた。2003年8月14日の2時過ぎ、カゼルタ県モンドラゴーネにあるカフェの中庭で、ボス達と仲違いしていた麻薬密売人ジュゼッペ・マンコーネが殺されたことを。
カルメリーナさんは、そこにいた。しかし犯人達にとっては、射撃場にある人型の的と大差なかった。通常、『的』は話したりはしない。しかし、カルメリーナさんは見てしまった。そして、忘れ去りたくはなかった。
教員資格を持ちながら掃除婦として働いていたカルメリーナさんは、この数日後、犯人についての目撃証言をした。そして犯人らが逮捕されると、慌ただしく荷造りをし、警察官4人と共に覆面パトカーへと乗り込み、遠くへ去ることとなった。
それから5年間、カルメリーナさんの消息は絶たれていた。昨年9月、彼女に関する記事がレップブリカ紙に掲載されるまでは。ある検察官が著書の中で、カルメリーナさんについて触れていた。ジュゼッペ・マンコーネ殺人事件を捜査していた裁判官が、カルメリーナさんのことを『砂漠に咲く一輪のバラ』と言い表していたのである。
己の身の危険を知りながら第一審、第二審ともに証言をし、容疑者(24才)を有罪とすべく貢献したからと。故郷を捨て、身元を新たにした時から、カルメリーナさんは沈黙を保ってきた。しかし現在、金も仕事もない。マフィア・グループに楯ついた人間を、雇う者などいない。
彼女は自分自身について語ることにした。そして、国家の役人に対し幻滅を抱き、証人保護プログラムを捨てた経緯について語ることにした。彼女のもとに残っている数少ない友人の家で、カルメリーナさんは白黒の写真を両手でもてあそぶ。写真には今よりほっそりとして、金髪に笑顔のカルメリーナさんが写っている。
「あの事件のたった数日前に撮ったんですよ。こんな風に綺麗だったのに…。」
証言することで、家も仕事も家族も捨てなければならなくなり、友達にはすぐ背を向けられた。当時、カルメリーナさんは身ごもっていたが、子供の父親は彼女を捨て、彼女自身も子供を諦めねばならなかった。
「逃げ隠れる生活で、子供は連れて行けないって思いました。」
そして、保護を受けながらの逃亡生活は、キリストが十字架にかけられたゴルゴダの丘へと変わったのだった。
「心理カウンセリングを頼むと、数ヶ月経ってからやっと受けさせてくれるんです。」
当初、カルメリーナさんは神からも見捨てられたような貧村のホテルに押し込められていた。食事に出されるスープには、ウジ虫が入っているような所だった。そのうえ、政府から毎月800ユーロ(約9万5千円)が支給されていたのだが、本来それは司法協力者(警察に協力し減刑されたマフィア犯罪者)に支給される金額であり、証言者の場合はその約2倍であった。
イタリア北西部チェゼーナ県に家1軒が与えられ、カルメリーナさんは仕事を探した。しかしNOP(協力者、証言者らの追跡本部)から届いたのは、支援ではなく侮辱的な言葉だったと言う。
「ある日、役人が机をたたいて私に言ったんです。“ 君は社会にとって重荷だよ ” って。別の日には “ 金がないなら福祉の食事サービスに行けばいい。” って言われました。私は仕事のために車が欲しかったんです。支給金から前払いしてくれるだけで良かったのに。」
カルメリーナさんの家庭状況もまた、悪化していった。祖父母は亡くなり、父親は肺がんを患い、母親は癲癇で超肥満症だった。唯一、家計の助けになりそうなのは左官職人の弟だったが、仕事を見つけてくることはなかった。家族は彼に、「お前みたいなならず者は、うちにいなくていい!」と言い続けた。
カルメリーナさんは失った赤ん坊を思って苦しみ、家族のために不安に駆られ、自殺を図ったこともあった。地獄の底を見て、もはやカルメリーナさんは保護プログラムに関わること事を望まなかった。20万ユーロ(約2千4百万円)の一括支給金を受取り、故郷のカンパニア州に戻らず、それでも以前よりは実家に近い土地に住み始めた。
しかし、受取った金は悪質な投資で浪費し、残りは両親の薬代に消えてしまった。もはや一銭も残ってはいない。今やカルメリーナさんにあるのは家族だけ。姉と弟に両親の5人が、父親の年金440ユーロ(約5万2千円)で暮らしている。まれに、あの殺人事件が起きたモンドラゴーネの町にぶらりと出かけると、人々はカルメリーナさんを指差し、こう言う。
「ほら、あれが寝返った女さ。」
(2009年1月27日 Corriere della Sera)

 

 

警察に押収されたマフィアの財産は、マフィア犯罪による犠牲者の家族に分配されると聞いたことがあります。ぜひ、このカルメリーナさんも犠牲者の1人に加えてあげたいもんです。

イタたわニュース:マフィア記事


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